クロマ・サブサンプリング

クロマサブサンプリング：画像圧縮の秘訣

デジタル画像や動画データのファイルサイズを小さくし、データ転送時間を短縮するために、圧縮技術が不可欠です。クロマサブサンプリングは、そうした圧縮技術の一つで、人間の視覚特性を巧みに利用することで、データ量を削減しながらも、目に見える画質の劣化を最小限に抑えることを目指します。

人間の視覚とクロマサブサンプリング

私たちの目は、明るさ（輝度）の変化には非常に敏感ですが、色の変化（色差）にはそれほど敏感ではありません。この視覚特性に着目したのがクロマサブサンプリングです。画像データは、明るさ情報（ルーマ、Y'）と色情報（クロマ、CbとCr）で構成されています。クロマサブサンプリングは、人間の目の特性を考慮し、色情報の解像度を明るさ情報よりも低くすることで、データ量を削減します。この手法は、アナログ・デジタル両方のビデオエンコーディング、JPEG画像圧縮など、広く利用されています。

サブサンプリングの仕組み

クロマサブサンプリングでは、色情報をより低い解像度でサンプリングします。これにより、元の画像データと比較して色情報の詳細が失われますが、通常の視聴距離ではその差はほとんど認識できません。

画像データは、まず明るさ情報（Y'）と色情報（Cb、Cr）に分解されます。そして、様々なフィルターを用いて、色情報の解像度を下げたデータが生成されます。ここで重要なのは、Y'はガンマ補正された輝度信号であり、輝度（Y）とは異なる点です。ガンマ補正は、人間の視覚の対数的な感度特性を考慮したもので、暗い部分の色情報に多くの情報量を割り当てることで、画像の視覚的な品質を向上させます。sRGB、Rec.601、Rec.709、Rec.2020といった様々な色空間はこの概念に基づいています。

サンプリング比率

クロマサブサンプリング方式は、J:a:b（またはアルファチャンネルがある場合はJ:a:b:α）という比率で表されます。

J：水平方向のルーマサンプル数（通常は4）
a：Jピクセルの最初の行におけるクロマサンプル数
b：Jピクセルの最初の行と次の行におけるクロマサンプル数の差（aと等しいか0）
α：水平方向のアルファチャンネルサンプル数（存在しない場合もある）

例えば、4:2:2は、水平方向4ピクセルに対して、最初の行で2つのクロマサンプル、次の行でも2つのクロマサンプルをサンプリングすることを意味します。ただし、4:4:1や4:2:1など、この表記に当てはまらない例外的な方式も存在します。

サンプリング方式の種類

様々なクロマサブサンプリング方式がありますが、代表的なものを以下に示します。

4:4:4: ルーマとクロマの両方を同じ解像度でサンプリング。高画質ですが、データ量も大きくなります。ハイエンドのフィルムスキャナやポストプロダクションで使用されることがあります。
4:2:2: 水平方向の色解像度が半分になります。多くのハイエンドデジタルビデオ形式やインターフェースで採用されています。(例:AVC-Intra 100, ProResなど)
4:2:1: 水平方向の色解像度が4分の1になります。少数のコーデックで採用されています。
4:1:1: 水平方向の色解像度が4分の1になります。DV形式などで使用されました。
4:2:0: 水平方向の色解像度は4:1:1の2倍ですが、垂直方向の色解像度が半分になります。データレートは4:1:1と同等です。DVDやBlu-ray Disc、多くのPALデジタルビデオ形式などで使用されています。
4:1:0: 垂直方向の色解像度が半分、水平方向の色解像度が4分の1になります。広く使用されているわけではありません。
3:1:1: ソニーのHDCAMレコーダーで使用されました。

アーティファクト

クロマサブサンプリングによって、以下の様なアーティファクトが生じる可能性があります。

ガンマ誤差: ガンマ補正された信号では、クロマの誤差が明るさに影響を与えることがあります。
* 色域外の色: 色情報の再構成時に、表示できない色（色域外の色）が生じる可能性があります。

用語

Y'UVとY'CbCrはどちらも色空間を表す用語ですが、Y'UVはアナログ、Y'CbCrはデジタルエンコーディングに使用されます。また、輝度（Y）とルーマ（Y'）は厳密には異なる概念です。

歴史

クロマサブサンプリングは、1950年代にアルダ・ベッドフォードによって開発されました。人間の目の色覚特性に基づき、色情報の解像度を下げることで、データ量を削減する仕組みです。

まとめ

クロマサブサンプリングは、画像・動画データの圧縮において重要な技術です。様々な方式が存在し、それぞれ帯域幅と画質のトレードオフの関係にあります。適切な方式を選択することで、ファイルサイズを抑えつつ、高画質な映像を実現することができます。

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