クロミドリシジミ

クロミドリシジミ（黒緑小灰蝶、学名: Favonius yuasai）は、チョウ目シジミチョウ科ミドリシジミ亜科に分類されるチョウの一種です。このチョウは、ゼフィルスと呼ばれるグループに属しており、その中でも特に独特な外見を持っています。

概要

クロミドリシジミは、一般的に雄の翅の表面が青緑色になるミドリシジミ類の一員ですが、本種は黒い縁取りと暗褐色のみで構成されており、構造色を持つ鱗粉は見られません。雌の場合、翅の表面の色は雄よりもわずかに薄くなります。翅の裏面は他のミドリシジミ類と大差ありませんが、地色の褐色が濃く、白い帯がやや細く、後翅にある赤い斑紋が2つ繋がっている点で区別できます。尾状突起は、他の種と同様に濃褐色から黒色で、先端が白く、やや長めです。

成虫は年に一度だけ発生し、6月中旬から活動を開始し、8月上旬頃まで見られます。卵の状態で越冬し、幼虫の食樹はクヌギやアベマキなどです。ゼフィルスの中では、それほど山地に特化した性質は持っていませんが、生息地が限られている上に、早朝に活動するため、観察するのが難しいとされています。

学名の「F. yuasai」は、このチョウの発見者である湯浅啓温氏の名前に由来しています。湯浅氏は、天竜峡を訪れた際、早朝に天竜峡から龍江へ向かう途中の姑射橋で、欄干に止まっている本種を発見しました。

分布

クロミドリシジミは、東北地方の内陸部、長野県の伊那谷、中国地方、九州地方に分布していますが、これらの地域は分断されており、連続した分布ではありません。四国地方には生息していません。国外では、朝鮮半島にのみ分布しています。

生態

• - 食樹: クヌギ、アベマキなど
• - 成虫発生時期: 6月中旬～8月上旬
• - 越冬態: 卵

その他

クロミドリシジミは、その独特な外見と生息環境から、観察が難しいチョウとして知られています。早朝に活動するため、観察を試みる場合は、十分な準備が必要です。

脚注

• - 牧林功解説、青山潤三写真『日本の蝶』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、1994年。ISBN 4-415-08045-6。
• - 日本環境動物昆虫学会編 編『チョウの調べ方』今井長兵衛・石井実監修、文教出版、1998年。ISBN 4938489112。OCLC 170389984。

関連項目

• - シジミチョウ科
• - ミドリシジミ

もう一度検索