ミドリシジミ

ミドリシジミ（Neozephyrus japonicus）

ミドリシジミはシジミチョウ科に属し、その鮮やかな色合いから魅力的な蝶として知られています。成虫の前翅長は約2cmであり、特に雄の翅は金属的な光沢を持つ金緑色の鱗粉に覆われています。一方で雌の翅は遺伝的な多型を持ち、主に4つの型に分類されます。これには、表面が全体的にこげ茶色で斑点がないO型、橙色の小さな斑点が見られるA型、紫色の帯状斑があるB型、そしてO型とA型の特徴を併せ持つAB型が含まれます。どちらの性別も翅の裏面は薄茶色で、細い白い帯があるのが特徴です。

成虫は、主に6月から8月初旬の期間に1回の繁殖を行い、雄はテリトリーを守りながら食樹の周辺を飛びます。花からの蜜を好み、特にクリの花などには多く集まります。雌は比較的活動が乏しく、日中はクリの花やクワの果実から養分を摂ることが多いです。

幼虫は、ハンノキ、ヤマハンノキ、ミヤマハンノキなどを食草とし、卵はハンノキの幹や枝に産み付けられます。冬を越した幼虫は翌春の4月から5月にかけて孵化し、新芽に潜り込んで若葉を食べます。成虫になる前には葉を巻いて隠れる習性があり、特に葉が硬くなる前の期間に蛹になります。この幼虫は飼育が比較的容易で、観察や研究に適しています。

ミドリシジミの分布はロシア極東、中国東北部、朝鮮半島、日本に及び、日本では主要な四つの島に生息しています。ただし、山口県西部や紀伊半島には存在しません。九州では特に内陸部の九重高原に集中しており、湿地に生えるハンノキ林が豊富にある地域に多く生息しています。1991年には埼玉県の「県の蝶」に指定されるなど、認知が高まっています。

日本のミドリシジミは、2つの亜種に分類されます。N. j. japonicusは本州以南に生息し、N. j. reginaは北海道で見られます。この蝶は、観察や撮影、収集を楽しむマニアも多く、他の美しい種と同様に愛されています。

ちなみに、ミドリシジミ属はかつては単一の属に分類されていましたが、現在ではいくつかの異なる属に分けられ、「ゼフィルス」という通称が一般的に用いられています。日本国内では13種の「ミドリシジミ」が存在し、オオミドリシジミ属はその中で特に知られています。

さて、ミドリシジミはその生息地において環境の変化に敏感です。近年では生息地が宅地造成などの開発により減少しており、保全活動が求められています。特に岐阜県、香川県、熊本県、大分県などでは絶滅危惧II類に指定されており、これらの地域での環境保護は重要です。ミドリシジミはゲンジボタルと共に里山環境の保全の象徴とされ、今後の生息環境の持続可能性が望まれています。

このように、ミドリシジミは日本の生態系において重要な役割を果たしており、その保護のためには湿地に生えるハンノキ林を守ることが不可欠です。これからも、美しい蝶を未来の世代へと引き継ぐための努力が必要でしょう。

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