クロンボー城

クロンボー城：歴史と文化が織りなすデンマークの至宝

デンマーク、シェラン島北東部のヘルシンゲルに位置するクロンボー城は、ユネスコの世界遺産に登録された歴史的建造物です。バルト海に面し、わずか7kmのエーレスンド海峡を隔ててスウェーデンのヘルシンボリと対峙する、戦略的に重要な立地にあります。

築城と変遷：軍事拠点から王宮へ

クロンボー城の起源は1420年代に遡ります。デンマーク王エーリク7世が、カルマル同盟の盟主としてエーレスンド海峡の通行税徴収拠点として、砦「Krogen」を築きました。この通行税は、北欧統一後の経済立て直しに大きく貢献しました。

16世紀には、フレゼリク2世により大規模な改築が行われます。時代遅れの要塞機能の強化に加え、王宮としての機能も追加されました。1585年に完成した城は、三階建てのルネサンス様式建築で、四方を翼廊に囲まれ、外縁部に塔を備えた壮大なものでした。この頃より「クロンボー」と呼ばれるようになります。

1629年の火災で城の大半が焼失するも、クリスチャン4世は海峡通行税の増税まで行い、1631年から6年をかけて修復工事を実施しました。この修復では防御力の強化とともに城内も改修され、初期バロック様式が導入されました。ユトレヒトから招かれた画家による天井画も、当時のまま現存しています。

1658年にはスウェーデン軍に落城するなど、幾多の戦乱を経験してきました。その後も増改築が繰り返され、1785年から1924年まではデンマーク軍の基地司令部として使用されていました。そのため、城内には創建当時の面影を残していない部分も多いです。

ハムレットの舞台：シェイクスピアとの関わり

クロンボー城は、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の舞台「エルシノア城」として有名です。シェイクスピア自身は訪れたことはありませんが、城内には記念碑が設置され、毎年夏には城の中庭で「HAMLET SOMMER」と題した演劇公演が行われています。この演劇は、城の歴史と『ハムレット』の世界観を融合させた、見どころの一つです。

世界遺産としての価値

クロンボー城は、2000年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準は「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」です。その歴史、建築様式、そして『ハムレット』との関連性から、世界的に重要な文化遺産として高く評価されています。

現在

現在も、クロンボー城は多くの観光客を魅了しています。城内には1760年代に使われていた12ポンド砲が保管されており、王室の慶事にはデンマーク軍による礼砲射撃も行われます。歴史と文化、そして物語が融合したこの城は、デンマークを代表する観光名所のひとつであり続けています。

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