クローゼー諸島

クローゼー諸島：インド洋に浮かぶフランス領の火山島群

クローゼー諸島（フランス語: Îles Crozet）は、インド洋の南部に位置するフランス領の諸島です。マダガスカルと南極大陸のほぼ中間に位置し、行政的にはフランス領南方・南極地域の一部となっています。この諸島は、その地理的な特徴と厳しい気候条件から、独特の生態系を育んでいます。

地理

クローゼー諸島は、東経50度33分から52度58分の範囲に広がり、大きく二つのグループに分かれています。主要な島としては、面積150km²のポセッション島、130km²のレスト島、67km²のコション島などが挙げられます。これらの島々は、標高800mから1000m程度の山地を形成しており、最高地点はレスト島のピク・マリオン・デュフレーヌで1050mに達します。

この諸島は火山活動によって形成されており、約880万年前の玄武岩が確認されています。そのため、島の地形は起伏に富み、独特の景観を作り出しています。

気候

クローゼー諸島は、氷河に覆われることはありませんが、非常に厳しい気候条件にあります。年間降水量は2500mmに達し、年間300日以上が雨天です。また、風速100km/hを超える強風が年間100日程度吹くことも珍しくありません。気温は、夏には18℃程度まで上昇しますが、冬には5℃程度まで低下します。ケッペンの気候区分では、西岸海洋性気候（Cfc）に分類されます。この気候条件は、動植物の生育に大きな影響を与えています。

住人

ポセッション島の東海岸には、フランスの科学研究施設であるアルフレッド・フォール基地があります。この基地には、18人から30人の研究者が常駐し、この島の自然環境や生態系に関する研究活動を行っています。

歴史

クローゼー諸島は、歴史上、無人島でした。最初にこの島を発見したのは、フランス人探検家のマリオン・デュフレーヌです。1772年1月24日にポセッション島に上陸し、この諸島をフランス領と宣言しました。諸島の名前は、デュフレーヌの副官であったジュリアン・クローゼーに由来します。

19世紀初頭には、アザラシの狩猟者が多く訪れましたが、1835年までにはアザラシがほぼ狩り尽くされてしまいました。その後は、この周辺海域で捕鯨が行われました。

クローゼー諸島周辺では、しばしば船舶の難破事故が発生しています。1821年には、イギリスの軍艦「プリンセス・オブ・ウェールズ」が沈没し、生存者は2年間も島で過ごさざるを得ませんでした。1887年には、フランスの「タマリ」号が難破し、乗組員はコション島に取り残されました。彼らはウミツバメの脚に手紙を付けて救助を求め、その手紙が7ヶ月後にフリーマントルで発見されましたが、結局乗組員は救助されませんでした。これは、この地域での難破事故が多発し、救助船が数年に一度しか派遣されなかったためです。

フランスは当初、この諸島をマダガスカルの属領としていましたが、1955年にフランス領南方・南極地域の一部となりました。1961年に最初の研究施設が建設され、1963年には常設の施設が完成しました。

生物

クローゼー諸島には、4種類のペンギンが生息しています。最も多いのはマカロニペンギンで、その他にキングペンギン、イワトビペンギン、ジェンツーペンギンが生息しています。また、ミナミゾウアザラシ、ウミツバメ、アホウドリなどの海鳥も多く生息しています。これらの動物たちは、厳しい気候条件の中で独自の生態系を築いています。

この諸島は1938年から自然保護区域に指定されており、世界遺産・ラムサール条約登録地である「フランス領南方地域国立自然保護区」の一部となっています。この保護区は、クローゼー諸島の貴重な自然環境と生物多様性を保全するために重要な役割を果たしています。

まとめ

クローゼー諸島は、その地理的な位置、厳しい気候条件、そして独自の生態系から、科学的な研究価値が非常に高い場所です。フランスの科学者たちは、この地で貴重な研究を行い、地球環境の解明に貢献しています。また、自然保護の観点からも重要な場所であり、その貴重な自然環境と生物多様性が未来に向けて守られていくことが期待されます。

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