イワトビペンギン

イワトビペンギンの生態

イワトビペンギンは、マカロニペンギン属に分類されるペンギンのうち、近縁な3種（または2種）の総称です。小型のペンギンで、頭部の黄色い冠羽が特徴的です。

分布

イワトビペンギンは、インド洋南部から南大西洋にかけて分布しています。生息域は局所的で、各々の種の生息域は経度的に限られています。生息域は全体として北へ移動しているとされています。南限はハード島とマクドナルド諸島（南緯53度）、北限はトリスタンダクーニャ諸島（南緯37度）です。主な繁殖地はフォークランド諸島、マッコーリー島、プリンス・エドワード諸島、クローゼー諸島、ケルゲレン諸島などです。

形態

体長は約50〜58cmで、マカロニペンギンなどの近縁種と比べて小型です。成鳥の目の上には眉のような黄色の羽毛があり、目の後ろで大きく広がる飾り羽になっているのが特徴です。この飾り羽と頭部の長い羽毛で、特徴的な冠羽を形成しています。目とくちばしは赤く、足はピンク色をしています。

生態

イワトビペンギンは、地上では両足を揃えて飛び跳ねるように移動します。この特徴的な動きが、和名の「イワトビペンギン」や英名"Rockhopper Penguin"の由来となっています。主な食性は日和見的で、オキアミ、頭足類、魚などを食べます。南インド洋から南太平洋に生息するミナミイワトビペンギンは甲殻類を、チリからアルゼンチン沖に生息するキタイワトビペンギンは頭足類を主に捕食します。平均潜水時間は53〜193秒、深度は10.4〜44.2mで、1時間あたり平均14〜40回の潜水を繰り返します。場所や季節によって採餌戦略を変える行動を見せます。

天敵は、オットセイ、ヒョウアザラシ、アシカなどの水生哺乳類です。また、オオトウゾクカモメ、カラカラ、カモメなどの鳥類に卵を奪われることもあります。性格は攻撃的で、近くを通ると攻撃してくることがあります。

野生下での寿命は10〜15年、飼育下では25〜30年と推測されていますが、十分な研究は進んでいません。

繁殖行動

成鳥は、4月、5月から10月にかけて繁殖地を離れて外洋で生活します。10月から1[[1月]]になると繁殖地に戻ってきますが、北方の個体群は7月に戻ってきます。営巣場所は、周囲を崖で囲まれた植物の生えた平地や、緩やかな斜面が好まれます。オスは小石を積み上げて巣を作り、この時に多くの小石を集められるオスほどメスに好まれます。巣の密度は高く、夫婦の絆が強いのも特徴です。58%のペアが2年続けて同じつがいを組みます。

産卵は1[[1月]]初旬から1[[2月]]に行われ、2つの卵を産みますが、最初に産んだ卵は廃棄されることが多いです。これはマカロニペンギン属全般に見られる習性です。抱卵期間は32〜34日で、オスとメスが交代で行います。孵化した雛は33〜39日間巣で給餌を受けますが、最初の24〜26日間はオスが雛を守り、メスが給餌します。成長した雛はクレイシュを作り、親鳥は交代で餌を運びます。巣立ちは北方の個体群で12〜1月、南方の個体群では2月頃です。雛の巣立ち後、成鳥は換羽を行い、換羽中は水に入れないため餌を取ることができません。そのため、換羽前に20〜30日間（北方では60日間）海に出て食いだめをします。換羽中に体重は40%減少します。

系統と分類

イワトビペンギンは、生息域、体長、冠羽の長さなどから、以下の3種に分類されます。

ミナミイワトビペンギン (E. chrysocome) - パタゴニアからフォークランド諸島の周辺海域に生息
ヒガシイワトビペンギン (E. filholi) - オーストラリアからニュージーランドの南岸海域に生息
キタイワトビペンギン (E. moseleyi) - ミナミイワトビペンギンに接した南大西洋、インド洋南部海域に生息

これらのうち、キタイワトビペンギンは遺伝的にも形態的にも他の2種と異なり、羽の色や模様、冠羽の長さ、体長などに違いが見られます。生息域も、この種のみ繁殖地が亜熱帯前線 (STF) の北に位置しています。

従来は3亜種に分類されていましたが、研究により、ミナミイワトビペンギンとキタイワトビペンギンは別種であるという考え方が主流になり、さらに3亜種それぞれが遺伝的に分離した別種であるという見解も出ています。国際鳥類学会 (IOC) はこれに対応しましたが、BirdLife International (BLI) は南北2種に分離するにとどめています。

保全状態評価

キタイワトビペンギンは、IUCNレッドリストで絶滅危惧種 (ENDANGERED) に指定されています。ミナミイワトビペンギンは、危急種 (VULNERABLE) に指定されており、個体数は734万羽と推定されていますが、過去30年間で24%減少しており、減少傾向は継続しています。減少の原因としては、漁業との競合、生息地への病原菌の侵入、油田開発や油の流出事故、漁網による絡まりなどが挙げられます。

展示

イワトビペンギンは、多くの水族館で飼育されています。飛び跳ねるような動きや鮮やかな飾り羽が人気を集めていますが、ペンギンの中ではやや攻撃的な種類とされています。他の種類のペンギンと一緒に飼育されている場合、身体の大きさで劣り、給餌時に他の種類に負けてしまう様子も見られます。一般的にペンギンは10羽程度の群れで飼育するのが望ましいとされていますが、1〜3羽での飼育が多いです。また、暑さに弱い為、夏季は室内展示や公開を停止している水族館もあります。

出典

BirdLife International 2005. Eudyptes chrysocome 2006 IUCN Red List of Threatened Species.

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