ピカデリーサーカス

ピカデリーサーカス：ロンドンの心臓部

ロンドンのウエストエンド、シティ・オブ・ウェストミンスター区に位置するピカデリーサーカスは、単なる交差点や駅名以上の存在感を放っています。その名は、かつてこの地にあった洋服店「ピカデリーホール」に由来し、現在ではシャフツベリー・アベニュー、リージェント・ストリート、コヴェントリー・ストリートなど主要道路が交差する、まさにロンドンの心臓部と言える場所です。劇場や商業施設が密集し、観光客や買い物客で常に賑わいを見せています。

歴史：変遷と発展

1819年、ジョン・ナッシュの設計によって建設されたピカデリーサーカスは、当初は円形広場でしたが、1886年にシャフツベリー・アベニューの建設により現在の形となりました。劇場街の中心に位置し、ピカデリーという主要商業地の出口でもあることから、建設以来、交通の要衝として常に混雑を極めてきました。チャールズ・ディケンズの息子もその賑やかさを記録に残しており、パリの大通りに匹敵する活気ある場所として描写されています。

1906年にはロンドン地下鉄ピカデリー・サーカス駅が開業。1908年にはネオンサインが登場し、1926年には信号機も設置されるなど、近代化も進みました。1960年代には交通量の増加に対応するため大規模な再開発計画が検討されましたが、最終的には実現せず、現在に至っています。

象徴：エロスとネオンサイン

ピカデリーサーカスの象徴と言えるのが、広場の中央に位置する噴水「エロス」です。正式名称は「キリスト教的慈愛を表す天使」ですが、ギリシャ神話の愛の神「エロス」として広く知られています。アルフレッド・ギルバートの設計によるこの噴水は、アルミニウム製の像としては世界初のもので、第二次世界大戦中は一時的に撤去され、広告が設置されたこともありました。裸体の像であることから、当初は賛否両論ありましたが、現在ではロンドンの象徴として市民に親しまれています。

一方、ピカデリーサーカスを語る上で欠かせないのが、ビルの外壁を彩るネオンサインです。1908年のペリエの広告を皮切りに、多くの企業が広告を掲載してきました。白熱電球からネオン管、そしてLEDへと進化し、ギネス社の巨大な時計を模したユニークな広告なども登場しました。第二次世界大戦中は消灯されましたが、現在はLED広告が主流となり、企業広告だけでなく、ニュースや天気予報なども表示されるようになっています。日本企業の広告もかつては多く見られましたが、近年は減少傾向にあります。

周辺：歴史的建造物と商業施設

ピカデリーサーカス周辺には、歴史的な建造物や商業施設が数多くあります。ロンドン・パビリオンやクライテリオン・シアターは、その歴史と建築美で人々を魅了しています。クライテリオン・シアターは、1874年に劇場としてオープンし、その後改修を重ねて現在に至る歴史ある劇場です。ロンドン・パビリオンは、当初ミュージックホールとして建設され、その後映画館、ショッピングセンターへと姿を変え、現在も人々の憩いの場として親しまれています。

また、タワーレコード（現在はヴァージンメガストア）やHMVといった音楽ショップ、スポーツショップのリリーホワイトなど、様々な商業施設が密集しています。かつてはロンドン三越も営業していました。ジャパン・センターも近隣にあり、日本文化に触れることも可能です。

文化：表現のモチーフとして

ピカデリーサーカスは、現代文化の中でも重要なモチーフとして登場します。「まるでピカデリーサーカスのようだ」という表現は、慌ただしい状況を表す比喩として広く用いられています。絵画や写真、音楽、文学、ゲームなど、多様な芸術表現の題材として、ピカデリーサーカスは人々の想像力を刺激し続けています。イギリスのみならず、世界中のアーティストやクリエイターにインスピレーションを与え続ける、ロンドンを代表する場所と言えるでしょう。

まとめ：ロンドンの活力と歴史の象徴

ピカデリーサーカスは、単なる交差点や駅名以上の存在です。その歴史、建造物、広告、そして人々の営みすべてが、ロンドンの活気と歴史を象徴しています。これからも、人々の交流と創造の場として、その魅力を放ち続けることでしょう。

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