クワス

クワス：東欧の伝統的な清涼飲料

クワス（ウクライナ語・ベラルーシ語・ロシア語: квас）は、東欧特有の微炭酸の微アルコール飲料であり、酸味が特徴的です。キエフ大公国の時代から飲まれており、現在でもウクライナ、ベラルーシ、ロシアを中心に広く親しまれています。

クワスの基本的な作り方

クワスの製造には主にライ麦と麦芽が用いられ、これらの原料は発酵されます。多くの家庭では、ライ麦パンや酵母を利用して簡単に自家製のクワスを作ることができます。また、クワスを使ってライ麦パンの生地を練ることも多く、パン作りに役立てられることもあります。特にロシアではクワスが夏の風物詩とされ、季節によって異なるレシピが存在し、風味の違いが楽しめます。

この飲料はアルコール度数が1%未満から2.5%程度であり、一般にはソフトドリンクとして販売されています。そのまま飲む他にも、トマト、キュウリ、タマネギなどの野菜やハム、ゆで卵を細かく切って混ぜた冷製スープ「オクローシカ」としても親しまれています。特にウクライナ、ベラルーシ、ロシアでは、クワスは伝統的にジュースとして飲まれており、アルコール飲料としてはあまり認識されていません。

クワスの歴史

クワスの起源は古代に遡り、古代エジプトではビールとクワスの中間の飲料が存在していたと考えられています。その存在はヒポクラテスやヘロドトスの著作にも記されており、クワスの歴史は実に長いものです。クワスがロシアにおける最初の記録として知られる文書は、989年にウラジーミル大公が民衆に食べ物と共に提供するように指示したもので、当時のクワスは現代のビールよりも高いアルコール度数を持つものでした。

12世紀ごろには、酸味の強弱によってクワスが分類され、特に酸味の強いものは「熟成クワス」と呼ばれるようになりました。さらに15世紀には、野草やハチミツ、果物、野菜を使った多種多様なクワスが生み出され、最大で約500種類にも及ぶレシピが存在したと言われています。

19世紀に入ると、他の飲料が流行しクワスの人気は一時的に低下しましたが、第一次世界大戦中の禁酒令の際には例外的に飲める飲料として再評価されました。また、ロシア国民保健協会は回復期の栄養補給に役立つ病院食として多くの病院でクワスを製造しました。

クワスの近年の状況

ソ連時代には、大規模な工場で生産されるようになり、公共の場でもクワスの自動販売機が設置されるほどの人気を誇りました。しかし、1991年のソビエト連邦崩壊後にはコーラなどの外国飲料に押され、その人気が一時的に衰退した時期もありました。ですが、2005年以降にはペットボトル入りのクワスが販売されるようになり、徐々にその消費量は回復しています。また、正教会の修道院でも伝統的にクワスが作られていることから、「修道院のクワス」とも呼ばれ、地域に密着した飲料としての役割を担っています。

このように、クワスはただの飲み物に留まらず、文化や歴史を反映した飲料であり、今なお多くの人々に愛されている存在です。

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