シュウ酸カルシウム

シュウ酸カルシウム（Calcium oxalate）

シュウ酸カルシウムは、化学式 CaC2O4 または (COO)2Ca で示されるカルシウムのシュウ酸塩で、特有の針状結晶を形成します。無水物、一水和物、二水和物（通称：ウェッデライト）などの形態が存在します。日本の法律においては、これが劇物として指定されています。

合成と反応

シュウ酸カルシウムは、シュウ酸の製造過程で生成される中間体です。具体的には、シュウ酸ナトリウムと水酸化カルシウムを混合することで、難溶性のシュウ酸カルシウムを得ることができます。このプロセスでは、シュウ酸カルシウムがさらに硫酸との反応によってシュウ酸に分解される反応が利用されます。以下にその化学反応式を示します。

1. Na2C2O4 + Ca(OH)2 → CaC2O4 + 2 NaOH
2. CaC2O4 + H2SO4 → H2C2O4 + CaSO4

このように、シュウ酸カルシウムは他の化合物との反応を通じて多様な化学的な特性を持っています。

性質

無色の結晶であるシュウ酸カルシウムは、水に溶けにくく、アルカリ土類金属のシュウ酸塩の中でも特に低い溶解度を示します。この特性から、シュウ酸カルシウムはカルシウムイオンやシュウ酸イオンの定量分析に使用されます。例えば、シュウ酸カルシウムの溶解度積は１８℃で1.78×10^-9と測定されています。また、塩酸や硝酸には溶解し、赤熱によって分解し、炭酸カルシウムを残す性質があります。

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CaC2O4 → CaCO3 + CO
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産出

シュウ酸カルシウムは特定の植物に多く含まれています。特に安心して食べられない毒草であるディフェンバキアや、ルバーブの葉、カタバミ、ヤマイモ、サトイモ、タロイモ、ヨウサイ、リュウゼツラン、モンステラ、さらには未成熟のパイナップルなどにも微量含まれます。こうした植物の茎や葉の中に不溶性のシュウ酸カルシウムが豊富に存在しています。

また、ビールの醸造過程でもシュウ酸カルシウムが関わり、醸造槽に付着する茶色い結晶（ビール石）がこれに由来します。ビール石はカルシウム塩やマグネシウム塩、さまざまな有機物から成るもので、醸造時に沈着しますが、これが微生物の繁殖を促し、ビールの風味を損なう可能性があります。

尿中にもシュウ酸カルシウムの結晶が見られ、これは一般的な尿路結石の主成分です。また、エチレングリコール中毒の症状としても知られています。

自然環境においては、シュウ酸カルシウムは一水和物のフーウェル石、二水和物のウェッデル石、希少な三水和物のカオックス石の形で存在することがあります。

摂取時の影響

シュウ酸カルシウムを摂取すると、ささいな量でも口内や喉に焼けるような痛みと腫れを引き起こし、ひどい場合には窒息の危険も伴います。多量摂取によっては消化器系の障害や呼吸困難を引き起こし、最悪の場合意識障害や死に至ることもあります。特にパイナップルを食べた際には口内が荒れる原因ともされています。また、生のサトイモを食べると、これも口内に強い刺激を与えます。

ディフェンバキアがもたらす症状はさらに深刻で、茎が唇や舌、口内の粘膜と接触することで、シュウ酸カルシウムの針状結晶が痛みや腫れを引き起こします。腫れの発生は結晶自体によるものが主ですが、他の植物毒素も影響を与えることがあります。

対応策

万が一シュウ酸カルシウムを摂取した場合、すぐに医師の診察を受けることが重要です。特に危険なのは、テンナンショウのような植物であり、これを少しでも食べると激しい腫れや焼けるような感覚が現れます。腫れが引くのに約12時間かかることが一般的で、アナフィラキシー症状と誤解されることもあります。

注意喚起しつつ、正しい対処法を知っておくことが重要です。

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