クンシラン

クンシラン（学名：Clivia nobilis）は、ヒガンバナ科クンシラン属に分類される複数種の総称です。この属の植物は、別名「クリビア」や「クリヴィア」としても知られています。園芸の世界で「クンシラン」と呼ばれる場合、多くの場合、学名がClivia miniataであるウケザキクンシランを指します。

特徴

クンシランの仲間は、主に南部アフリカのナタール州周辺に自生する球根植物です。しっかりとした太い根を持ち、肉厚で光沢のある葉が特徴的です。春先には、美しい橙色を基調とした漏斗型の花を咲かせます。その名前には「ラン」と付きますが、植物学的にはラン科ではなく、ヒガンバナ科に分類されます。日本へは明治時代に伝わったとされています。

花色は、温かみのある橙色が最も一般的ですが、品種によっては黄緑色やクリーム色の花を咲かせるものもあります。葉には美しい斑が入る種類もあり、花がない時期でも観葉植物として一年中その艶やかな葉姿を楽しむことができます。また、開花後には丸い果実が実り、この果実も観賞価値が高いとされています。クンシランは株の寿命が長く、適切に管理すれば長年にわたり花や葉の美しさを満喫できる植物です。

草丈があまり伸びず、コンパクトにまとまる性質を持つものは、「ダルマ系」と呼ばれ、省スペースでの栽培に適しています。属を代表するClivia nobilisは花を下向きに咲かせるのに対し、一般的に普及しているウケザキクンシラン（Clivia miniata）は花を上向きに開花させるという、明確な違いがあります。

クンシランは、3月5日と3月15日の誕生花とされており、花言葉には「高貴」「貴ぶ」「誠実」「情け深い」「端正」「幸せを得る」「高潔」「気高い」など、品格を感じさせる言葉が多く見られます。

栽培方法

クンシランは強い日差しを苦手とするため、地植えには向かず、鉢植えでの栽培が適しています。水はけの良い素焼き鉢やテラコッタ鉢を選ぶのがおすすめです。植え付けは4月から5月にかけて行うのが最適です。土壌は、根腐れを防ぐために水はけの非常に良いものを選びましょう。市販されているクンシラン専用の培養土を利用すると失敗が少ないです。

花の見頃は2月から5月頃で、花が咲き終わった株は、直射日光や雨が当たらないような場所を選んで屋外で管理します。室内から屋外へ急に移動させると、強い日差しで葉が焼けてしまうことがあるため、30%程度の遮光ネット（寒冷紗）などで日差しを和らげながら、徐々に外の環境に慣らしていくことが、美しい葉を保つ秘訣です。

梅雨以降はクンシランの成長が盛んになる時期です。この期間は、加湿による根腐れに特に注意しながら水やりを行います。真夏を除いた成長期には肥料を与えますが、花芽が形成され始める10月頃からは施肥を停止します。花芽の形成には、冬期に5℃から10℃程度の低温環境に約60日間晒されることが必要です。この低温期をしっかり経験させないと花が咲かないことがあります。ただし、霜に当たると葉が傷んでしまうため、防寒対策をしっかりと行った上で、低温での管理を行います。

梅雨時期にはナメクジによる食害が発生しやすいため、あらかじめ忌避剤や殺虫剤を撒いておくと安心です。クンシランは寒さに弱いため、蕾が十分に膨らんできたら、霜に当たる前に室内に取り込み、レースのカーテン越しのような柔らかい光が当たる場所で管理すると、無事に開花を楽しむことができます。

名前の由来

属名であるCliviaは、イギリスの貴族であるクライブ家にちなんで名付けられた、あるいはイギリスの女流詩人であるクリビア公爵夫人に由来するとされています。種小名のnobilisはラテン語で「高貴な」という意味を持ち、これが和名「クンシラン（君子蘭）」の由来となっています。ウケザキクンシランの種小名miniataは「赤くなる」という意味、キバナウケザキクンシランの変種名citrinaは「レモン色の」という意味を持っています。

主な種

クンシラン（Clivia nobilis）
一本の花茎に10輪以上の花をつける性質がありますが、花一つ一つは小ぶりで、下向きに咲くため全体として派手さよりも落ち着いた印象を与えます。葉の縁には細かい鋸歯があり、葉の先端が窪んでいるのが特徴です。

*ウケザキクンシラン（Clivia miniata）
一本の花茎につける花数はClivia nobilisよりも少ないですが、花弁が大きく、上向きに開花するため、華やかな雰囲気があります。葉の縁は滑らかで鋸歯がなく、高性品種と矮性品種が存在します。園芸店などでクンシランとして最も多く見られる種類です。

*キバナウケザキクンシラン（Clivia miniata var. citrina）*
ウケザキクンシランの変種にあたり、橙色ではなく鮮やかな黄色からクリーム色の花を咲かせます。それ以外の基本的な特徴や栽培に関する性質は、ウケザキクンシランに準じます。

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