クンフー・トーア

クンフー・トーアとは

クンフー・トーアは、1960年代にイランの軍人エブラーヒーム・ミールザーイーによって創始された格闘技です。その特徴は、柔軟で素早い動きを重視し、鷹をシンボルとする優美さと力強さを兼ね備えている点です。ミールザーイーは、太極拳、テコンドー、空手、南派少林拳、ヨガなど、様々な武術を研究し、自身の経験と工夫を加えてクンフー・トーアを完成させました。

歴史

クンフー・トーアの創始者であるエブラーヒーム・ミールザーイーは、パフラヴィー朝イランの空軍士官でした。彼は、モハンマド・レザー・シャーの支援を受け、アジア各地を武者修行の旅に出ました。そこで様々な武術を学び、25年の歳月をかけてクンフー・トーアを創り上げました。完成したクンフー・トーアはイラン軍にも導入されました。

しかし、1979年のイラン革命により、シャーが追放されると、クンフー・トーアは新政府によって禁止され、ミールザーイー自身も命を狙われることになりました。彼は当局に足を撃たれた後、トルコやヨーロッパに逃れましたが、その後の消息は不明です。しかし、彼の教えを受けた弟子たちは、海外でクンフー・トーアの普及活動を続けました。近年、イラン国内でもクンフー・トーアは合法化され、再び人気が高まっていると言われています。

技術体系

クンフー・トーアでは、7つの套路（型）を学びます。この7つという数は、イスラム教の神秘主義であるスーフィズムの寓話「鳥の会議」に由来しています。この寓話は、鳥たちが「シームルグ」という鳥の帝王に会うために旅をする物語で、その途中で7つの谷（困難）に直面するという内容です。このことから、7つの型を学ぶことは、困難を乗り越えて悟りに至るという哲学的な意味が込められています。

クンフー・トーアでは、身体を鍛えることを通して、精神的な成長を促し、人生を充実させることを目的としています。そのため、型稽古だけでなく、瞑想も重視されています。

7つの型

クンフー・トーアの型は以下の通りです。

アナトア
アタド
ソト
サムサマエ
マヤナ
クアンナ、ヴェストマヤナ
ヴァイマパト

一つの型を修得すると、道着の右胸にストライプが刻まれ、次の型に進むことができます。7つの型を全て習得すると、緑帯が与えられます。緑帯以降は、最終的な体系が定められる前にイラン革命が起きてしまったため、明確な規定はありませんが、型を修めた時点で黒帯を与える道場もあります。また、武器術も存在し、釵や「ラケイマ」と呼ばれる刀を使用します。師範になると、赤いベストが与えられます。

その他

日本では、「イラニアン・カンフー」として「コン・キャフ・タバン」という名前で紹介されたこともあります。また、クン・ケフォ・タヴァンとも呼ばれることもあります。

クンフー・トーアは、クラヴマガのように軍事的な背景を持つ武術でありながら、精神的な側面も重視している点が特徴的です。また、日本拳法のように、他の武道の影響を受けている点も興味深いと言えるでしょう。

外部リンク

型の演武（アタド） - YouTube
* World Kung Fu To'a Federation (世界クンフー・トーア連盟)

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