クープラン家

クープラン家

クープラン家は、17世紀から19世紀初頭にかけて約200年間にわたり、フランス音楽史、特にバロック音楽の時代において極めて重要な地位を占めた音楽家の一族です。パリ東部、セーヌ＝エ＝マルヌ県にあるショーム・アン・ブリを発祥の地とし、一族は多くの優れた楽師を輩出しました。彼らは主にパリを中心に活動し、特に教会音楽と鍵盤音楽の分野で多大な貢献をしました。

この一族の歴史を語る上で欠かせないのが、パリ4区のマレ地区にあるサン・ジェルヴェ教会との深い結びつきです。1653年の復活祭の日、ルイ・クープランがこの教会のオルガニストに就任して以来、実に174年もの長きにわたり、クープラン家のメンバーが代々その地位を継承し続けたのです。ルイに始まり、彼の弟フランソワ(1)、その息子のニコラ、ニコラの息子アルマン＝ルイ、アルマン＝ルイの息子ピエール＝ルイとジェルヴェ＝フランソワ（兄弟）、そしてジェルヴェ＝フランソワの娘セレスト＝テレーズへと、七代にわたってオルガニストの椅子が引き継がれました。これは一族の音楽的能力の高さと、教会からの信頼の厚さを示すものであり、彼らがパリの音楽界、特に教会音楽において中心的な役割を担っていたことの証でもあります。

クープラン一族の中で最も広く知られ、後世に多大な影響を与えたのは、「大クープラン」として称されるフランソワ・クープラン（フランソワ(2)）です。彼はシャルル・クープラン(2)の息子にあたり、サン・ジェルヴェ教会のオルガニストも務めましたが、特にクラヴサン音楽の作曲家、演奏家として歴史に名を刻みました。彼の作品は優雅で洗練されており、フランス・バロック様式の鍵盤音楽の粋を極めたものとして高く評価されています。「クラヴサン曲集」や教会音楽の傑作は、現代でも多くの演奏家によって演奏されています。彼の存在は、クープラン家が単なるオルガニストの一族に留まらず、作曲や演奏技術の面でもフランス音楽界をリードしていたことを物語っています。

一族の活動はオルガンやクラヴサンに限定されませんでした。家系図に見られるように、ルイ・クープランはクラヴサン、オルガンに加えてヴィオラ・ダ・ガンバ奏者としても知られています。また、女性の音楽家も複数登場します。マルグリット＝ルイーズ・クープランは優れた歌手であり、マルグリット＝アントワネット・クープランはルイ15世の王女の音楽教師、後に王宮のクラヴサン奏者という重責を担いました。マリー＝マドレーヌ・クープランは修道女でありながらオルガニストを務め、セレスト＝テレーズ・クープランは前述の通り、サン・ジェルヴェ教会の最後のクープラン家オルガニストとなりました。これらの多様な活動は、クープラン家が幅広い分野で音楽に関わり、男性だけでなく女性も音楽家として活躍する機会があったことを示しています。

農夫であり楽器演奏者であったマテュラン、公証人でもあったドニなど、一族の始まりには音楽以外の職業を持つ人物もいましたが、次第に音楽の専門家としての道を歩む者が増えていきました。シャルル・クープラン(1)や[フランソワ・クープラン]といった初期の音楽家たちの努力が、後の偉大な音楽家たちを育む土壌となったと言えるでしょう。

クープラン家は、その約200年間にわたる活動を通して、フランスのバロック音楽様式、特にオルガン音楽やクラヴサン音楽の発展に決定的な影響を与えました。サン・ジェルヴェ教会における彼らの永続的な存在は、教会音楽と世俗音楽の両面における彼らの重要性を象徴しています。彼らの残した楽譜は、現代の音楽史研究や演奏活動において貴重な遺産となっています。

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