グィーディ・ダ・ファエンツァの聖母

『グィーディ・ダ・ファエンツァの聖母』：ボッティチェッリ初期の傑作

『グィーディ・ダ・ファエンツァの聖母』（仏: Madone des Guidi de Faenza、英: Madonna of the Guidi da Faenza）は、イタリア・初期ルネサンスを代表する画家、サンドロ・ボッティチェッリが21歳から22歳頃の1465年頃に制作したテンペラ画です。ポプラ板に描かれたこの作品は、ボッティチェッリの初期の作風を示す重要な作品とされていますが、彼の工房の画家による作品であるという見解も存在します。

この絵画は、かつてイタリアのファエンツァ地方の有力な一族であるグィーディ家の所蔵品であったことから、この名で呼ばれています。1914年、バジール・ド・シュリシュタン男爵によってパリのルーヴル美術館に寄贈され、現在に至ります。

作品の特徴

この作品は、ボッティチェッリの師であるフィリッポ・リッピの『聖母子』を強く意識した構図となっています。遠くまで広がる風景を背景に聖母子を描くスタイルは、リッピの作風を色濃く反映しています。ただし、『グィーディ・ダ・ファエンツァの聖母』では、リッピの作品にはない窓枠が描かれており、背景の岩山や霊廟の風景は、後世の加筆が多く、現実には存在しない情景です。

聖母マリアは、広い額と透明なヴェールが特徴的で、その優美で少女のような雰囲気は、師リッピの影響を感じさせます。しかし、同時に、アンドレア・デル・ヴェロッキオからの影響も見て取ることができます。幼子イエスは、リッピの描く赤ん坊らしいイエスとは異なり、頬が赤く、しっかりとした鼻を持ち、生命力にあふれた姿で描かれています。

マリアはX字型の玉座に穏やかに腰掛け、イエスは母の膝によじ登り、抱きしめられようとする様子が描かれています。母と子は互いを一心に見つめ合い、その親密な関係性は、鑑賞者を温かい団欒の情景へと引き込みます。この母子の愛情あふれる描写こそが、この作品の大きな魅力の一つです。

まとめ

『グィーディ・ダ・ファエンツァの聖母』は、ボッティチェッリの初期の作品でありながら、彼の卓越した才能と、師であるフィリッポ・リッピ、そしてアンドレア・デル・ヴェロッキオからの影響が融合した傑作です。聖母マリアと幼子イエスの親愛な関係性を描き出し、観る者を魅了するこの作品は、ルネサンス絵画の重要な一例として、今なお多くの人々に愛されています。

参考文献

ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
中山公男・佐々木英也責任編集『NHKルーブル美術館IV ルネサンスの波動』、日本放送出版協会、1985年刊行　ISBN 4-14-008424-3

外部リンク

* ルーヴル美術館公式サイト、ボッティチェッリ『グィーディ・ダ・ファエンツァの聖母』 (フランス語)

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