グランツ・ファースト・スタンド

『グランツ・ファースト・スタンド』（Grant's First Stand）は、アメリカ合衆国のジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンが1961年に録音し、発表した記念すべき初のリーダー・アルバムです。

本作の制作は、グリーンがサックス奏者ルー・ドナルドソンの紹介を経て、名門ブルーノート・レコードのプロデューサー、アルフレッド・ライオンと出会ったことから始まりました。グリーンは本作の録音に先立ち、1961年1月23日に録音されたドナルドソンのアルバム『ヒア・ティス』のセッションに参加しています。このセッションで共に演奏したハモンドオルガン奏者のベイビー・フェイス・ウィレットとは意気投合し、その音楽的な相性の良さが本作での重要な起用へと繋がりました。

本作は、グラント・グリーン（ギター）、ベイビー・フェイス・ウィレット（ハモンドオルガン）、ベン・ディクソン（ドラムス）という、オルガン・トリオ編成で録音されました。この編成は、当時のジャズシーンにおいて、特にソウル・ジャズの分野で人気を博しており、グリーンのブルースフィーリング溢れるギターとウィレットのパワフルなオルガンが見事に融合しています。

このトリオの結びつきは強く、本作の録音からわずか2日後に録音されたウィレット名義のアルバム『フェイス・トゥ・フェイス』では、本作のトリオにテナーサックス奏者のフレッド・ジャクソンを加えたカルテット編成で演奏に参加しています。さらに、同1961年5月に録音され、翌1962年に発表されたウィレットのアルバム『ストップ・アンド・リッスン』では、本作と全く同じグラント・グリーン、ベイビー・フェイス・ウィレット、ベン・ディクソンのトリオ編成で録音が行われており、彼らの緊密な音楽活動の一端がうかがえます。

本作の音楽性については、批評家からも高く評価されています。例えば、音楽レビューサイト「オールミュージック」のスティーヴ・ヒューイは、5点満点中4.5点を付け、その演奏を高く評価しました。ヒューイは、グリーンとウィレットの双方が持つブルースからの強い影響を指摘しつつも、グリーンが単なるブルース・ギタリストに留まらず、他のギタリストではなく管楽器奏者の旋律を手本とした個性的なバップ・フレーズをも披露している点に注目しています。特に、躍動的な冒頭曲「ミス・アンズ・テンポ」や、ウィレットが作曲した「ベイビーズ・マイナー・ロープ」といった楽曲において、グリーンのバップ的なアプローチが見事な効果を生み出していると評しています。

収録曲は以下の通りです。

ミス・アンズ・テンポ - "Miss Ann's Tempo" (グラント・グリーン)
木の葉の子守歌 - "Lullaby of the Leaves" (Bernice Petkere, Joe Young)
ブルース・フォー・ウィラリーン - "Blues for Willarene" (グラント・グリーン)
ベイビーズ・マイナー・ロープ - "Baby's Minor Lope" (Baby Face Willette)
エイント・ノーバディーズ・ビジネス・イフ・アイ・ドゥ - "Ain't Nobody's Business If I Do" (Porter Grainger)
ア・ウィー・ビット・オ・グリーン - "A Wee Bit O' Green" (グラント・グリーン)

参加ミュージシャンは以下の通りです。

グラント・グリーン - ギター
ベイビー・フェイス・ウィレット - ハモンドオルガン
* ベン・ディクソン - ドラムス

『グランツ・ファースト・スタンド』は、グラント・グリーンの輝かしいキャリアの出発点として、ブルースフィーリングとジャズの洗練が見事に融合した、ジャズギター史において重要な作品の一つです。

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