グランドツアー計画

グランドツアー計画

グランドツアー計画（Grand Tour program）は、NASAがかつて提案した、無人探査機4機を用いて太陽系の外縁部の惑星を探査する壮大なプロジェクトです。この計画では、2機ずつの探査機が2グループに分かれ、一方では木星、土星、冥王星を、もう一方では木星、天王星、海王星の探査を行う構想が練られていました。しかし、約10億ドルという巨額の予算が必要だったため、計画は中止され、後にボイジャー計画として縮小されました。

背景

この計画の発端は、1964年にカリフォルニア工科大学の院生ゲイリー・フランドロが発見した天文現象にさかのぼります。彼は、木星、土星、天王星、海王星が1983年にほぼ同一の方向に並ぶことを発見し、この機会を利用することで、スイングバイを通じて1機の探査機で複数の惑星を探査できると考えました。このような配置は175年に一度のものであり、一度限りのチャンスだったのです。1966年には、JPL（ジェット推進研究所）がこのアイデアを実現するための計画を実行に移しました。

グランドツアーの成立

1969年、NASAは外惑星作業部会を設立し、複数の惑星を一度に探査する2つのミッションを提案しました。この計画では、木星、土星、冥王星を1977年に、木星、天王星、海王星を1979年にそれぞれ打ち上げる計画が立てられました。ミッションを分けることで、探査期間を短縮し、より効率的な探査が可能になると考えられました。また、考案された新しい探査機、TOPS（Thermoelectric Outer Planets Spacecraft）は、10年以上にわたり運用が可能であるよう設計されました。

この計画は1969年8月に公開され、リチャード・ニクソン大統領も支持を表明しました。しかし、1971年には、計画に必要となる予算が7億5千万ドルから9億ドルとされ、さらには打ち上げ費用として1億ドル以上が見込まれることとなりました。議会からの圧力、および新しいスペースシャトル計画との競争が影響し、グランドツアー計画は1971年12月に中止の決定を下されました。

マリナー木星・土星計画への移行

グランドツアー計画が中止された後、1972年に「マリナー木星・土星計画」が承認されました。この計画では、木星と土星の探査に焦点を当て、必要となる費用はそれぞれ3億6千万ドル以下に抑えられました。探査機の運用可能期間は当初の計画に基づいていましたが、対象は木星と土星に限定されました。

この計画では、木星、土星、ならびに土星の衛星タイタンの探査が予定されていました。タイタンは、太陽系内の衛星の中でも唯一大気を持つ天体として、特に注目されていました。探査によってその大気の密度や組成、温度などの詳細なデータが収集できることが期待されていたのです。

さらに、NASAは1977年3月にこの計画の独自の名称を決めるコンペを実施し、結果的に「ボイジャー計画」という名称が受け入れられました。従って、ボイジャー1号と2号はグランドツアーの理念を引き継ぎながら打ち上げられました。ボイジャー1号はタイタンのフライバイを行い、ボイジャー2号は木星、天王星、海王星の探査に向けて設計されました。

ボイジャー計画の成果

ボイジャー1号のタイタンでのフライバイは、地表が大気の影響で見えなかったものの、液体炭化水素の湖が存在することを示す貴重なデータを提供しました。また、ボイジャー2号は、天王星と海王星に向けてミッションを継続し、1964年に提案されたグランドツアーの目標が最終的に達成されたのです。

グランドツアー計画は、当初の夢は達成されませんでしたが、その研究と提案は後の宇宙探査に多大なる影響を与えることとなりました。

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