グランド・オール・オプリ

グランド・オール・オプリ：アメリカ音楽の殿堂

『グランド・オール・オプリ』(Grand Ole Opry) は、アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビルを拠点とするラジオ局WSMで、毎週土曜の夜に放送されるカントリーミュージックの公開ライブ番組です。1925年11月28日に放送を開始して以来、現在も続くアメリカ最古のラジオ番組として、その歴史を刻み続けています。グレート・アメリカン・カントリー(GAC)ネットワークを通じてテレビ放送もされており、国内外を問わず多くのファンを魅了しています。

多様な音楽ジャンルとエンターテイメント

オプリは、カントリーミュージックの保存と発展に貢献しており、カントリー、ブルーグラス、フォーク、ゴスペルといった様々なジャンルの巨匠や、現代のヒットチャートを賑わすアーティストたちが舞台に立っています。音楽演奏だけでなく、コメディや寸劇などのパフォーマンスも行われ、観客を楽しませています。

「カントリーミュージックを有名にした番組」とも評されるオプリは、「アメリカンミュージックの本拠地」や「カントリーの最も有名な舞台」として知られ、アメリカの象徴の一つとされています。世界中から数十万人の観客が訪れ、数百万の人々がラジオやインターネットを通じてその放送を聴いています。

発展の歴史

1930年代には、番組はプロフェッショナルな体制を整え、放送時間も1時間から4時間に拡大しました。WSMは5万ワットの出力で、土曜夜には30州近くに放送を届けました。1939年にはNBCラジオによって全米放送が開始され、1943年にはライマン公会堂を常設の活動拠点としました。これらの発展が、ナッシュビルを「カントリーミュージックの首都」へと押し上げる原動力となりました。

オプリのメンバーになることは、カントリーミュージック界において最高の栄誉の一つとされています。ハンク・ウィリアムズ、パッツィ・クライン、ロイ・エイカフ、カーター・ファミリー、ビル・モンローなど、数々の伝説的なアーティストたちがオプリの舞台で活躍しました。近年では、ドリー・パートン、ガース・ブルックス、リーバ・マッキンタイアといった現代のカントリースターも出演しています。

1974年からは、ナッシュビルのダウンタウン東側に位置するグランド・オール・オプリ・ハウスから放送が行われるようになり、ラジオ放送に加えて、時折テレビ放送も行われています。

初期の歴史と変遷

グランド・オール・オプリは、ナッシュビルのダウンタウンにあった保険会社、National Life & Accident Insurance Companyの第5スタジオで始まりました。最初の出演者は、当時77歳のフィドル奏者アンクル・ジミー・トンプソン。アナウンサーは、番組ディレクターのジョージ・D・ヘイ(「ソロモンの老判事」)でした。ヘイは、シカゴのラジオ局WLSで人気を博した「National Barn Dance」でフィドルとスクエアダンスの番組を手がけたパイオニアでした。

初期のレギュラーバンドには、ポッサム・ハンターズ、フルート・ジャー・ドリンカーズなどがいました。ヘイは、出演者を田舎風の愛称で呼び、衣装も農場を思わせる演出を施しました。1926年には、バンジョー奏者のアンクル・デイヴ・メイコンが最初のスターとなり、1927年12月には番組名が正式に「グランド・オール・オプリ」となりました。

1943年にはライマン劇場に移動し、1954年にはエルヴィス・プレスリーが一度だけ出演しました。しかし、1960年代には、保守的な方針から長髪のアーティストを拒否するなど、時代とのずれも生じました。グラム・パーソンズが在籍していたバーズが、出演を拒否されたエピソードは、その象徴と言えるでしょう。

グランド・オール・オプリ・ハウスと近年の展開

1974年、ショーはダウンタウンの東に新設された4,400席のグランド・オール・オプリ・ハウスに移転しました。オープリーランドUSAというテーマパークに隣接して建設されました。オープリー・ハウスの舞台には、ライマン公会堂の舞台の一部が円形に切り取られて使用されています。テーマパークは1997年に閉鎖されましたが、オープリー・ハウスはそのまま存続し、周辺施設と共に発展を続けています。現在も世界中から多くのファンが、ナッシュビルに音楽を聴きに来ています。

2010年には、テネシー洪水で甚大な被害を受けましたが、復旧作業を経て無事に再開されました。この歴史的な出来事は、「カントリー・カムズ・ホーム」という特別番組で生放送され、オプリの歴史に新たな1ページを加えました。

文化、経済的側面と番組の放送

オプリは、カントリーミュージック界の登竜門とされ、多くの新人アーティストたちが、この舞台を目指して努力を重ねています。初期には出演料が支払われなかったこともありましたが、次第に改善され、質の高いパフォーマンスが提供されるようになりました。一時的に「古くさい」と見なされた時期もありましたが、伝統を守りながら、新たなアーティストを取り入れる姿勢は、オプリの魅力を高める要因となっています。

現在は、クラッカー・バレルなどの企業がスポンサーとして番組を支えています。『グランド・オール・オプリ』は、中部標準時で土曜夜7時からWSM-AMで生放送されているほか、『Willie's Roadhouse』などのチャンネルでも聴くことができます。また、1週間の総集編が『アメリカズ・オープリー・ウィークエンド』として放送され、WSMのウェブサイトでも聴取可能です。

メンバーシップと論争

オプリのメンバーになることは、カントリーミュージック界のエリートであることの証明であり、多くのアーティストにとって憧れの的です。メンバーシップは、ただ獲得するだけでなく、現役で活躍し続けることが求められます。また、長年、ドラムや電気楽器の使用を巡って論争がありましたが、時代とともに緩和されてきました。

2010年には、カントリー歌手チェリー・ライトが同性愛者であることをカミングアウトし、オプリに出演しなくなったことで、カントリーミュージック界の保守的な一面が浮き彫りになりました。

商標、スポンサーと日本人出演者

「グランド・オール・オプリ」は商標登録されており、その使用は厳しく制限されています。クラッカー・バレルをはじめとする企業が、現在スポンサーとして番組を支えています。

日本人出演者としては、大野義夫、トミ藤山、ブルーグラス45などがいます。オプリは、音楽のジャンルを超え、様々な文化を受け入れる舞台として、今後もその歴史を刻み続けるでしょう。

受賞歴

オプリは、その功績を認められ、1983年にはピーボディ賞、1992年にはアメリカ・ラジオ殿堂入りを果たしています。

グランド・オール・オプリは、カントリー音楽の歴史そのものと言えるでしょう。その歴史は、これからも多くの人々に語り継がれていくことでしょう。

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