グリゴリオス5世 (コンスタンディヌーポリ総主教)

グリゴリオス5世総主教

グリゴリオス5世（1746年 - 1821年）は、コンスタンティノープルの総主教として歴史に名を刻んだ重要な宗教的指導者である。彼はディミトゥサーナ村の貧しい家庭に生まれ、後にコンスタンディヌーポリ全地総主教に就任した。その職務において、1738年の聖ゲオルギオス大聖堂の修復に力を注いだことで知られ、この聖堂の再建は彼の指導力の象徴とも言える。グリゴリオス5世は、1797年から1821年までの間に3回にわたり総主教として在職した。

ギリシャ独立戦争とグリゴリオス5世

1821年、ギリシャ独立を目指す秘密結社フィリキ・エテリアが設立され、彼の時代に大きな影響を及ぼした。この組織の指導者アレクサンドロス・イプシランディスは、ロシアからワラキア、モルドバに侵入し、ギリシャ独立戦争の火蓋を切った。当初、ギリシャの各地域では少数の人々が立ち上がったものの、反乱は瞬く間にペロポネソス半島にも広がりを見せた。

この動きに対抗するため、オスマン帝国のスルタン・マフムト2世は、対ギリシャの宗教的聖戦を示唆するためにイスラムの長老に相談したが、この長老は結局、聖戦の布告を拒否した。その後、グリゴリオス5世は彼と会議を行い、フィリキ・エテリアの指導者たちをオスマン帝国に対する背反者として非難する勅令を発表した。彼は、教会の聖職者に対して反乱への参加を禁じ、その違反には厳罰が科せられることを警告した。この対応は、彼の宗教的立場を強調し、オスマン帝国内での忠誠を保つ目的でもあった。

処刑の経緯

1821年4月22日、イスタンブールの聖ゲオルギオス大聖堂で復活祭の祭典が行われていた。その際、オスマン帝国の兵士たちが堂内に押し入り、グリゴリオス5世を含む首位聖職者たちを捕らえ、絞首刑にした。彼の最期は、教会内の祭りの最中に突如として訪れ、その恐ろしい結末は多くの宗教的な信念の崩壊をも意味していた。同時に他の数人の聖職者も同様に命を奪われ、その命はオスマン帝国の正教徒に対する厳しい弾圧の象徴となった。

また、スルタンはグリゴリオス5世の遺体に対する侮辱を行い、その遺体をユダヤ人に渡して市場で引きずり回すよう命じた。このような行為は、オスマン帝国が正教徒としての誇りを打ち砕く意図を持っていたことを示唆している。後に、遺体は流通していた貨物船によって発見され、グリゴリオス5世であることが確認された際、彼に対する最後の祭儀が行われた。

死後の影響と記憶

彼はギリシャに移送され、アテネの生神女福音大聖堂に埋葬された。グリゴリオス5世は正教徒の間で国の致命者（Εθνομάρτυρας）として記憶され、彼の死はギリシャ独立運動の象徴的な出来事となった。総主教庁の正門は、彼の名を称えるために1821年に溶接され、その後もずっと閉じられたままである。このようにして、グリゴリオス5世はギリシャの歴史において永遠の記憶となり、その生涯と死は正教会の信念と抵抗の象徴として後世に語り継がれることとなった。

もう一度検索