グリトニル銀行

グリトニル銀行の歴史とその影響

グリトニル銀行（Glitnir Banki hf.）は、1990年に設立され、アイスランドを拠点にした金融機関でした。この銀行は、当時の母体となった金融機関であるAlþýðubanki（組合銀行）、Verzlunarbanki（商業銀行）、Iðnaðarbanki（産業銀行）、そして破綻した公営のÚtvegsbanki（水産銀行）を統合する形で誕生しました。設立当初は「アイスランド銀行」（Íslandsbanki）と称され、アイスランドの主要な民営銀行として他の国営のカウプシング銀行やランズバンキ銀行と区別されました。

銀行は1993年にアイスランド証券取引所に上場し、その後2000年にFBA Icelandic Investment Bankとの合併を経て、2002年にはアイスランド銀行の名称に戻しました。グリトニル銀行は特に国外における積極的な経営戦略で注目され、ノルウェーでの金融機関買収を通じてグループを拡大していきました。2006年には、北欧神話のキャラクターであるグリトニルにちなんだ行名に変更し、新たなブランドイメージを確立しました。

しかし、2008年の金融危機により、グリトニル銀行は急速に経営が悪化し、最終的にアイスランド政府が75%の株式を取得し、国有化に至りました。この決定は、アメリカ合衆国の景気後退の影響を受けてのもので、過剰なレバレッジを利用した投資が致命的な結果を招くこととなったのです。

破綻の背景

グリトニル銀行は、少額の資金を担保として多額の資金を借り入れ、その資金をユーロ圏を中心に運用していました。しかし、経営規模の小ささゆえにリスク管理が不十分であり、政府もその問題を指摘することはありませんでした。当時の国際情勢では、アメリカの景気後退に伴い、ドルが下落。その中でウォール街のアナリストは、ユーロを選ぶべきであると発信していましたが、実際のユーロはアメリカの経済後退を織り込んで高騰していました。この状況下で、グリトニル銀行はユーロ建ての投資を増やす選択をし、大きな評価損を抱えることになりました。

ユーロの価値が下がるにつれて、銀行はリスクを過小評価し、楽観的な見通しを持っていましたが、その見通しは破綻の道を歩むことになったのです。グリトニル銀行の破綻は、マーケットに大きな影響を与え、アイスランド・クローナの暴落を引き起こしました。この急落はアイスランド経済全体に深刻な影響を及ぼし、他の国営銀行の破綻を引き起こしました。

その背景には、アイスランドが主に漁業に依存していた経済構造も一因です。また、インフレ率が高く、通貨が安定していない状況で、クローナは高金利の通貨として取引されることが多くありました。これにより、多くの投資家がクローナに注目した結果、バブルが形成されました。しかし、そのバブルはグリトニル銀行の破綻によって崩壊し、アイスランド経済は厳しい選択を強いられることとなったのです。

特にアイスランドは、今後金融国家としての回復を目指すのか、それとも漁業や製造業の強化に舵を切るべきか大きな岐路に立たされています。著名なアイスランド出身の歌手、ビョークもまた、国の技術立国化を唱えており、アイスランドの未来に向けた新たなビジョンが求められています。

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