グリーゼ357

グリーゼ357とその惑星系

うみへび座の方向、地球からおよそ31光年という比較的近い距離に、11等級の暗い星が見えます。これがグリーゼ357と呼ばれる天体で、GJ 357という別名でも知られています。この星は、太陽よりもずっと小さく暗い「赤色矮星」に分類されます。

主星グリーゼ357の特徴

グリーゼ357は、スペクトル分類ではM2.5V型に位置づけられる、ごくありふれたタイプの赤色矮星です。その物理的なサイズは太陽のおよそ3分の1程度で、質量も太陽の約3分の1しかありません。表面温度は約3,500ケルビンと低温で、太陽の表面温度（約5,778ケルビン）と比べるとかなり冷たい星です。そのため、太陽の約1.6%という非常に弱い光しか放っていません。

天球上で大きく移動して見える「高速度星」の一つとしても知られています。

太陽系外惑星探査ミッションTESSによる観測対象となり、惑星が存在する可能性が示唆されたため、TESSによる観測リストではTIC 413248763やTOI-562といった仮符号が与えられています。

3つの太陽系外惑星の発見

この星の周りに惑星が存在する可能性が浮上し、詳しい探査が行われました。NASAの太陽系外惑星探査機TESSが実施した、惑星が主星の手前を通過する際に星の光がわずかに暗くなる現象（トランジット法）を用いた観測データと、1998年からハワイのケック天文台やチリのラスカンパナス天文台などで行われていた、主星のふらつきから惑星の重力を検出するドップラー分光法（視線速度法とも呼ばれます）による長期的な観測記録を詳細に分析・照合した結果、2019年にこのグリーゼ357の周囲を公転する3つの太陽系外惑星の存在が確実となりました。

見つかった惑星は、主星に近い順にグリーゼ357b、グリーゼ357c、グリーゼ357dと名付けられました（TESSの仮符号はそれぞれTOI-562.01、TOI-562.02、TOI-562.03です）。これら3つの惑星はすべて、地球よりも大きな質量を持つ「スーパー・アース」と呼ばれるタイプの惑星であると考えられています。

各惑星の詳細

グリーゼ357b:
発見方法: TESSによるトランジット観測とドップラー分光法を組み合わせて確認されました。
物理量: 半径は地球の約1.2倍、質量は約1.8倍です。
環境: 主星からの放射を非常に強く受けており、その量は地球が太陽から受ける量の約12倍にもなります。このため、推定される表面温度は525ケルビン（摂氏252度）にも達し、研究チームからは「ホット・アース」と呼ばれています。生命が存在するには熱すぎる環境と考えられています。
トランジット: 地球から観測されています。

グリーゼ357c:
発見方法: 主にドップラー分光法によってその存在が示されました。
物理量: 少なくとも地球の3.4倍の質量を持つことが分かっています。もし岩石でできていると仮定すれば、半径は地球と同程度から最大で2倍程度と推測されます。
トランジット: 地球から観測されていません。

グリーゼ357d:
発見方法: 主にドップラー分光法によってその存在が示されました。
物理量: 少なくとも地球の6.1倍の質量を持つことが分かっています。もし岩石でできていると仮定すれば、半径は地球と同程度から最大で2倍程度と推測されます。
環境: 最も外側を回るこの惑星は、主星グリーゼ357の周囲で液体の水が安定して存在しうる範囲、いわゆる「ハビタブルゾーン」の外縁に近い軌道を公転しています。大気の温室効果などを考慮しない場合、推定される平衡温度は219.6ケルビン（摂氏マイナス53.6度）です。しかし、もし地球のような適切な厚さの大気が存在すれば、表面に液体の水が存在できる可能性があると考えられています。このことから、NASAはこの惑星を生命探査の観点から「有望な世界（Promising world）」と位置づけています。
トランジット: 地球から観測されていません。もし今後トランジットが観測され、大気の有無などが詳しく分かれば、これは地球から最も近い距離にある、潜在的に生命が存在しうる惑星の一つとなる可能性があります。

グリーゼ357の惑星系は、赤色矮星の周りに多様なスーパー・アースが存在し、特にハビタブルゾーンに位置する惑星dが今後の詳細な探査のターゲットとして注目されています。これらの惑星のさらなる詳しい性質は、将来のより高性能な望遠鏡による観測によって明らかになると期待されています。

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