グリーゼ412

グリーゼ412は、太陽から約15.8光年という比較的近い距離に位置する連星系で、おおぐま座に属しています。この系は、共通の固有運動を持つ2つの恒星から構成されており、主星のグリーゼ412Aと伴星のグリーゼ412Bは、どちらも赤色矮星です。

2つの星は約31.4秒角離れており、これは実際の距離にして約190AUに相当します。主星の質量は太陽の約48%であるのに対し、伴星はわずか10%に過ぎません。主星の赤道自転速度は3km/s以下と遅い一方、伴星は7.7 ± 1.7 km/sまたは4.5km/sと高速で自転しています。この高速な自転は、伴星の活動性と密接に関わっており、電磁スペクトルにおいてバルマー系列の強い輝線（Hα線）が見られる要因となっています。

グリーゼ412系の空間速度は、銀河系のハローに属する種族IIの恒星系であることを示唆しています。伴星のグリーゼ412Bは、特に高速な自転速度を持ち、自転周期は1.8日以下と推定されています。これは、このサイズの赤色矮星としては非常に珍しい特徴です。

この系では、太陽系外惑星の探索を目的とした主星の視線速度観測が行われてきましたが、惑星の存在を示すような有意な変動は確認されていません。また、近赤外線スペックル干渉計による観測では、1から10AUの範囲には伴星が存在しないことが確認されており、この系を周回する褐色矮星も発見されていません。

伴星のグリーゼ412Bは、閃光星としても知られており、おおぐま座WX星という変光星名も持っています。1939年にはすでに、天文学者アドリアン・ヴァン・マーネンによって変光が観測されています。グリーゼ412BはX線源としても知られていますが、主星のグリーゼ412AはX線をほとんど放射していません。この系のX線放射は、天文衛星ROSATによって初めて観測されました。

グリーゼ412系は、比較的近い距離に位置する連星系であり、その特異な性質から、天文学の研究対象として注目されています。特に伴星の高速自転やX線放射は、赤色矮星の活動性を理解する上で重要な手がかりを提供しています。また、惑星探索の観点からも、今後の観測によって新たな発見が期待される天体です。

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