グリーゼ433

グリーゼ433は、天の赤道付近、うみへび座の方向に位置する恒星です。太陽系から約29.6光年という比較的近い距離に存在する、複数の惑星系を持つ暗い赤色矮星として知られています。

恒星の性質

グリーゼ433は、スペクトル分類M2Vに属するM型主系列星です。古い時代の恒星円盤の一員と考えられており、その物理的特徴は太陽とは大きく異なります。質量は太陽質量の約48%、半径は太陽半径の約53%と、太陽よりかなり小型です。有効温度は3,445ケルビンと太陽よりずっと低く、そのため放射する光度も太陽のわずか3.4%と控えめです。自転周期は約73日とゆっくりしており、同程度の質量を持つ恒星と比較して、その活動レベルは平均を下回っています。見かけの等級は9.81、絶対等級は10.07であり、その暗さから肉眼で観測することは不可能です。

惑星系

グリーゼ433の周囲には、複数の太陽系外惑星が発見されています。

グリーゼ433b: この惑星は、地球の少なくとも6倍の質量を持つ「スーパー・アース」に分類されます。主星から約0.056天文単位の距離を公転しており、その公転周期は約7日と非常に短いです。2009年10月にその存在がプレスリリースで発表されましたが、詳細な発見論文は後に発表されました。2014年の研究論文でその存在が改めて確認されました。
グリーゼ433c: 2012年に候補として検出され、2014年の論文で確認された惑星です。グリーゼ433系の中で最も主星から遠い軌道を公転していることが分かっています。これまでに発見された海王星型の惑星としては、最も近く、最も離れ、最も温度が低いというユニークな特徴を持っています。
* グリーゼ433d: 2020年1月に新たに発見された惑星です。質量はグリーゼ433bと非常によく似ています。この惑星の軌道は、グリーゼ433系のハビタブルゾーン（生命が存在しうる領域）内に位置していますが、主星に比較的近いため、「暖かい」ハビタブルゾーンの境界内に留まると考えられています。

星周円盤の可能性

ハーシェル宇宙天文台を用いた観測により、グリーゼ433の周囲から通常よりも多くの赤外線が検出されました。この赤外線過剰は、主星を取り巻く星周円盤、すなわち塵や岩石などからなる円盤状構造が存在する可能性を示唆しています。この円盤の詳細はまだ明らかになっていませんが、推定される平均温度は30ケルビン程度であり、主星から半径16天文単位以内の領域に存在していると考えられています。これは、この恒星系が惑星形成や進化の過程で残された物質をまだ保持していることを示唆する興味深い特徴です。

グリーゼ433系は、複数の惑星、特にハビタブルゾーン内に位置する可能性のある惑星を持つ点、そして星周円盤の存在が示唆されている点など、赤色矮星系の研究において重要な対象となっています。

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