グリーン・ベレー (映画)

映画『グリーン・ベレー』について

『グリーン・ベレー』（原題：The Green Berets）は、1968年にアメリカで製作された戦争映画で、アメリカ陸軍特殊部隊であるグリーンベレーに焦点を当てています。この作品は、ロビン・ムーアの同名小説を原作としていますが、映画の内容は原作とは大きく異なっています。公開以来、評価は分かれており、賛否が激しい作品でもあります。

映画の背景

本作は、反共主義をテーマにし、特に南ベトナムにおけるアメリカ軍の視点からの肯定的なプロパガンダが色濃く反映されています。1968年はベトナム戦争におけるアメリカの介入が盛り上がり、特にテト攻勢へとつながる重要な年でした。この時期、ジョン・ウェインは国内の反戦運動や社会的不満に対抗する形で映画を製作し、アメリカの介入を支持する意図があったとされています。

ウェインはアメリカ陸軍の全面的な協力を得て、当時の大統領リンドン・ジョンソンにも支援を要請しました。彼はこの映画を、南ベトナムで戦う兵士たちへの敬意を表する手段として考え、主人公の役を演じるために他のオファーを断って製作に取り組みました。

映画製作の困難

原作小説の映画化権を所有していたコロンビア・ピクチャーズは、最初の脚本家が軍の要求に応じた脚本を制作できずにいました。その後、ジェームズ・リー・バレットによる脚本が提出されたものの、軍当局からの修正要請が続きました。具体的には、南ベトナム軍の防衛シーンや北ベトナムでの将軍誘拐の描写についての要求があったとされています。

映画内では、北ベトナム軍とベトコンが一方で有能な敵として描かれる一方、彼らの行動は冷酷なものとして捉えられています。また、ベトナム戦争の特殊な戦闘スタイルについても描写されており、敵の存在が予測できない密林での戦闘を強調しています。これにより、南ベトナム軍に関する前向きな見解を示す珍しい映画としても位置づけられています。

あらすじ

物語は、新聞記者のジョージ・バックワースがアメリカ軍の特殊部隊グリーンベレーによるベトナム戦争の介入に関するブリーフィングに参加することから始まります。彼はその中でアメリカがアジアの戦争に加担する理由が、国際的な共産主義に対抗するためであると説明されます。グリーンベレーの隊員たちは、戦争の正当性を証明するために共産主義国製の装備を示しますが、バックワースはその説明に対して懐疑的です。

カービー大佐は彼に、実際にベトナムに従軍してみることを提案し、物語は彼の体験を通じて進行します。

評価と批判

本作はベトナム戦争を肯定的に描いたため、多くの批判を受けました。公開後、映画評論家のロジャー・イーバートはこの映画を「星ゼロ」と評価し、時代遅れの印象を指摘しました。また、オリバー・ストーンの反戦映画『プラトーン』には、本作への批判的要素が見られます。加えて、映画の映像表現における撮影ミスや不自然なシーンも多くの批判を集めました。特に、ベトナムの地理的特徴に合わないラストシーンや、明らかに玩具が使用されたシーンなどが指摘されています。

それにも関わらず、興行的にはそれなりの成功を収めました。ジョン・ウェインは、その批判が映画に向けられたのではなく、戦争そのものに向けられたのだと述べています。

音楽

映画の音楽も話題となりました。最初に作曲を依頼したエルマー・バーンスタインは政治的理由で辞退したため、ロージャ・ミクローシュが新たに選ばれました。主題歌としては、当時のグリーンベレー隊員バリー・サドラーの「グリーン・ベレーのバラード」が使用され、他にも様々な楽曲が提供されていますが、最終的に一部はカットされました。

映画は、戦争というテーマを通じてアメリカの戦略や価値観を伝える試みがなされており、視聴者に深い印象を残す一作となっています。

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