グレンガリー帽

グレンガリー帽は、スコットランドのグレンガリー一族に起源を持つ、フェルトやウールで作られた特徴的な縁なし帽です。スコットランド・ゲール語では「bonaid bhiorach」または「bonaid Ghlinn Garaidh」と呼ばれ、その歴史は18世紀末にまで遡ります。

歴史

グレンガリー帽の原型は、1794年にグレンガリーのアラスデア・ラナルドソン・マクドーネルによって考案されたとされています。1805年頃には、スコットランド高地のグレンガリー渓谷に住む氏族（クラン）が、一族の目印として着用するようになりました。この帽子が広く知られるようになったのは、その優れた携帯性が認められ、ハイランダー兵の軍帽として採用されたことがきっかけです。

特に、第一次世界大戦中には、各国で軍用の略帽として広く使用され、その実用性からギャリソンキャップへと派生しました。日本へは明治時代に紹介され、工部大学校が初期に学生帽として採用したという記録も残っています。

特徴

グレンガリー帽は、ツイードの産地として有名な地域で作られることが多く、ウール織物がその素材として用いられます。フェルトやウール織物を使い、前部が高く後部にかけて徐々に低くなる舟形の縁なし帽に仕立てられます。帽子のクラウン（山）の中央には、センタークリースと呼ばれる深い溝が施されており、この溝によって帽子を折り畳むことができます。柔らかい生地を使用しているため、中心から二つに折り畳んでベルトなどに挟んで持ち運ぶことが可能です。

縁部分は革でパイピングされ、耐久性を高めていますが、式典用のグレンガリー帽ではシルクでパイピングが施されることもあります。ギャリソンキャップと形状が非常に似ていますが、グレンガリー帽には後部に約10センチ程度の飾りリボン（ストリーマー）が縫い付けられている点が大きな違いです。このストリーマーによって、グレンガリー帽とギャリソンキャップを識別することができます。

軍装との関連性

グレンガリー帽は、スコットランドのハイランダー連隊の軍帽として広く採用され、その歴史的なルーツから軍服や制服の一部として重要な役割を果たしました。その特徴的な形状は、軍服の伝統と格式を象徴するものであり、現在でも軍装品として、または民族衣装の一部として見ることができます。

グレンガリー帽は、その実用性と独特なデザインから、軍事的な用途だけでなく、ファッションアイテムとしても注目されています。そのルーツであるスコットランド文化を象徴する帽子として、世界中で愛され続けています。

参考文献

出石尚三『帽子の文化史 : 究極のダンディズムとは何か』ジョルダン、2011年。ISBN 978-4-915933-38-7。

関連項目

軍服
制服
ギャリソンキャップ

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