グレート・ガマ

グレート・ガマ：不屈のインド人レスラー

グレート・ガマ（本名：Ghulam Mohammad Baksh Butt、1878年5月22日 – 1960年5月23日）は、インドの誇る伝説的なレスラーであり、通称「ルスタム・エ・ヒンド（インドのロスタム）」として知られています。彼は、52年以上のキャリアにおいて無敗を誇り、1910年には世界ヘビー級王座を獲得しました。その圧倒的な強さとストイックなトレーニングは、後世の格闘家たちにも大きな影響を与えました。

生涯

グレート・ガマは、植民地時代のインド、パンジャブ州のアムリトサル近郊のジャボウォール村で生まれました。彼の家系は、代々レスラーを輩出する名門であり、ガマ自身も幼い頃からレスリングの才能を発揮しました。

6歳の時に父親を亡くした後、母方の祖父であるヌン・パハルワン、さらにその死後は叔父のイダによって育てられ、レスリングの指導を受けました。10歳の時には、ジョードプルで開催されたストロングマン・コンテストに参加し、その才能を認められ、ダティアのマハラジャの庇護のもとで訓練を受けることになります。

トレーニングと食事

ガマのトレーニングは、非常に過酷なものでした。毎日、40人のレスラーを相手にスパーリングを行い、5000回のスクワット（バイサック）と3000回の腕立て伏せ（ダンド）をこなしました。さらに、約100キロのハスリと呼ばれるドーナツ型の器具を身に着けてトレーニングを行っていたといいます。

彼の食事もまた、常人には想像もできないほどのものでした。毎日、10リットルの牛乳、1.5ポンドのデジチキンカルハイ、0.5リットルのラッシー、6ポンドのバター、バケツ3杯分のフルーツサラダ、2キロのパコラ、6つのサモサ、フルーツジュースなどを摂取し、消化器系と筋肉の健康を促進していました。

キャリア

ガマの名声は、1895年に17歳で、インドのレスリングチャンピオンであったラヒーム・バクシュ・スルタニワラに挑戦したことから始まりました。身長約213cmのラヒームに対し、ガマは169.5cmと小柄でしたが、試合は引き分けに終わりました。この試合を機に、ガマは「ルスタム・エ・ヒンド（インドのレスリングチャンピオン）」の称号を争う有力候補として認識されるようになります。

その後、ガマはインド国内の強豪レスラーを次々と打ち破り、1910年には、当時世界最強と謳われたスタニスラウス・ズビスコに挑戦するため、イギリスに渡ります。

ロンドンでのトーナメント

ロンドンでガマは、あらゆる体重のレスラーを30分以内に3人投げ飛ばすという挑戦を表明します。当初、相手は見つかりませんでしたが、アメリカのベンジャミン・ローラーが挑戦に応じ、ガマは彼をわずか数分で破りました。その後も、12人のレスラーを破るなど、その強さを見せつけました。

スタニスラウス・ズビスコとの試合

1910年9月10日、ガマは世界チャンピオンのスタニスラウス・ズビスコと対戦します。しかし、試合はズビスコが守りに徹したため、引き分けに終わりました。再戦が予定されましたが、ズビスコは現れず、ガマが勝利を収め、ルスタム・エ・ザマナ（世界チャンピオン）の称号を獲得しました。

アメリカとヨーロッパのチャンピオンに対する試合

その後も、ガマはアメリカやヨーロッパの強豪レスラーを次々と破り、その名を世界に轟かせました。しかし、フランク・ゴッチなど、他の世界チャンピオンとの対戦は実現しませんでした。

ラヒーム・バクシュ・スルタニワラとの最後の出会い

イギリスから帰国後、ガマはラヒーム・バクシュ・スルタニワラと再戦し、勝利を収め、「ルスタム・エ・ヒンド」の称号を手にしました。ガマ自身も、ラヒームを最強のライバルとして認めていたといいます。

ズビスコとの再戦

1928年、ガマは再びズビスコと対戦し、今度は1分以内に勝利を収め、直系の世界レスリング世界選手権のインド版を獲得しました。

インド・パキスタン分離独立

1947年のインド・パキスタン分離独立の際、ガマはイスラム教徒でありながら、ラホールの暴徒から数百人のヒンドゥー教徒を救いました。彼は、1952年まで現役を続けましたが、対戦相手を見つけることができなくなり、引退しました。

後年

引退後、ガマはパキスタン政府から土地と年金を与えられ、医療費も支給されました。1960年5月23日、ラホールで病気のため亡くなりました。

ブルース・リーは、ガマのトレーニング方法に深く感銘を受け、自身のトレーニングに取り入れたことで知られています。また、彼が使用したハスリは、インドの国立スポーツ研究所博物館に展示されています。

チャンピオンシップと栄冠

国際プロレスリング殿堂 (2021年度)
ジョージ・トラゴス/ルー・テーズプロフェッショナルレスリング殿堂 (2007年度)
* プロレスリングの殿堂 (2015年度)

グレート・ガマは、その圧倒的な強さと不屈の精神で、インドのレスリング界に名を残し、今もなお多くの人々に尊敬されています。

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