グレート・ジンバブエ遺跡

グレート・ジンバブエ遺跡：石の家が語る古代文明の物語

グレート・ジンバブエ遺跡は、ジンバブエ共和国の首都ハラレから南へ約300km、標高約1000mのジンバブエ高原に位置する、壮大な石造建築遺跡です。ジンバブエとは、ショナ語で「石の家」を意味し、首長や王の宮廷を指す言葉でもあります。この遺跡は、かつてこの地で繁栄したショナ族の国家の中心地であり、その歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。

誤った仮説と初期の調査

19世紀後半、グレート・ジンバブエ遺跡は、シバの女王の首都オフィールであるという誤った説が唱えられました。探検家たちは、遺跡からレバノン杉の香りがすることなどを根拠に、古代フェニキア人やユダヤ人が建設したと主張しました。しかし、これらの説は、後の本格的な考古学調査によって否定されます。

本格的な考古学調査の幕開け

20世紀に入り、デイヴィッド・ランダル・マッキーヴァーやガートルード・ケイトン＝トンプソンといった考古学者によって、科学的な調査が行われるようになります。彼らは、遺跡から出土した土器や生活用品が、現在のショナ族が使用しているものと酷似していること、石造建築にアラビア風の影響が見られないことなどから、グレート・ジンバブエ遺跡がショナ族によって建設されたことを明らかにしました。

遺跡の構成

グレート・ジンバブエ遺跡は、大きく分けて「アクロポリス（丘上廃墟）」、「谷の遺跡」、「大囲壁（グレートエンクロージャー）」の3つのエリアに分かれています。

アクロポリス

「アクロポリス」は、比高差80mの花崗岩の丘の上に築かれた遺構で、西エンクロージャーと東エンクロージャーに区分されます。西エンクロージャーには、高さ7～9mの巨大な石壁がそびえ立ち、首長の権威を示す穀物蔵や武具を表す塔があったと考えられています。一方、東エンクロージャーには、祭祀や宗教に関連する遺物が出土しており、鳥の彫像が刻まれた石柱は、雨乞いなどの儀式に用いられたと推察されています。アクロポリスは、政治と宗教の中心地として機能していたと考えられます。

谷の遺跡

「谷の遺跡」は、「アクロポリス」の南方に広がり、王や首長の妻と子供たちの住居であったと考えられています。最大の遺構は、直径10mを超える円形の壁を持つ大きな住居で、草葺きであったと推測されています。中国製の陶磁器や西アジア産のガラス製品など、様々な交易品が出土しており、倉庫としての機能も持っていたと考えられます。

大囲壁（グレートエンクロージャー）

「大囲壁」は、長径89m、周囲244m、高さ11mにも及ぶ巨大な石壁で囲まれた建造物です。内部は東側と西側に分かれており、西側は居住空間、東側には円錐形の塔が建てられ、宗教的な空間であったと考えられています。大囲壁の用途については、成人式の学校のような施設であるという説や、王権の象徴であるという説があります。

グレート・ジンバブエの歴史

グレート・ジンバブエ遺跡の居住は、紀元前2500年頃に始まりました。9世紀頃から発展し、11世紀から15世紀にかけて最盛期を迎えました。この頃の人口は、約35000人に達したと推定されています。グレート・ジンバブエは、インド洋との交易ルートの中継地として栄え、金、鉄、銅などの資源を取引していました。

しかし、15世紀後半になると、資源の枯渇、気候変動、交易ルートの変化などにより、グレート・ジンバブエは衰退し、放棄されました。

世界遺産としての価値

グレート・ジンバブエ遺跡は、1986年にユネスコの世界遺産に登録されました。その理由は、以下の3つの登録基準を満たしているためです。

1. 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
2. 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
3. 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するものであること。

グレート・ジンバブエ遺跡は、古代アフリカの文明の証として、その価値を世界に認められています。

現代におけるグレート・ジンバブエ

ジンバブエ・アフリカ人民同盟 (ZAPU) は、グレート・ジンバブエこそアフリカ人の新国家の誇るべきシンボルであると主張しました。現在のジンバブエ共和国の国旗には、グレート・ジンバブエ遺跡から出土した鳥の彫像が描かれており、国家の象徴として大切にされています。

グレート・ジンバブエ遺跡は、過去の栄光を物語るだけでなく、現在を生きる人々に誇りと希望を与える存在なのです。

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