トマス・オブ・ウッドストック

初代グロスター公トマス・オブ・ウッドストック

初代グロスター公トマス・オブ・ウッドストック（1355年 1月7日 - 1397年 9月8日または9月9日）は、イングランド王エドワード3世と王妃フィリッパ・オブ・エノーの間に生まれた第13子、つまり末子でした。彼はエドワード3世の5人の成人した息子の1人で、エドワード黒太子、クラレンス公ライオネル・オブ・アントワープ、ランカスター公ジョン・オブ・ゴーント、ヨーク公エドマンド・オブ・ラングリーの弟にあたります。

生涯

1355年、トマスはオックスフォードシャーのウッドストック宮殿で誕生しました。彼より上の2人の兄もトマスという名前でしたが、夭折しています。1376年にはエレノア・ド・ブーンと結婚し、義父である第7代ヘレフォード伯兼エセックス伯ハンフリー・ド・ブーンからエセックス伯を継承しました。また、義妹のメアリー・ド・ブーンは、甥にあたるヘンリー・ボリングブルック（後のヘンリー4世）の妻でもありました。

父王エドワード3世が始めた百年戦争に参加し、1381年にイングランドへ帰国するまでフランス各地を転戦しました。その間の1377年には、22歳でバッキンガム伯に叙爵されています。1385年にはオーマール公にも叙爵されましたが、同時期に新たに創設されたグロスター公の称号を与えられました。

グロスター公は、甥であるリチャード2世の側近政治を打破しようと企てた有力貴族の一派、いわゆる「訴追派貴族」のリーダー的存在でした。1386年3月に兄のランカスター公がカスティーリャへ遠征に出ると、アランデル伯リチャード・フィッツアラン、ウォリック伯トマス・ド・ビーチャム、ノッティンガム伯トマス・モウブレー、そしてボリングブルックらと結託し、同年10月の議会で国王側近の初代サフォーク伯マイケル・ド・ラ・ポールを弾劾し、投獄に追い込みました。さらにリチャード2世に圧力をかけ、国政を主導し、王の財政を監視するための常設委員会（または常設評議会）を設置させ、自らが委員長として主導権を掌握しました。

リチャード2世がこれに反抗する姿勢を見せ、軍勢を集め始めると、グロスター公ら訴追派貴族は迎撃の準備を整え、1387年末のラドコット・ブリッジの戦いで国王側近のアイルランド公ロバート・ド・ヴィアーの軍を奇襲し、大勝利を収めました。これにより、リチャード2世はロンドン塔に謹慎を余儀なくされ、翌1388年2月の非情議会では、アイルランド公をはじめとする側近8名が反逆罪で弾劾され、その処刑を認めざるを得ませんでした。しかし、委員会はスコットランドとのオッターバーンの戦いに敗北し、弾劾の正当性に対する疑問の声が上がり始め、次第に窮地に陥りました。1389年5月、リチャード2世は世論を背景に親政を宣言し、委員会は廃止され、グロスター公ら委員は解任されました。同年11月には、カスティーリャから帰国したランカスター公の調停により、リチャード2世との和解が成立しました。

その後、リチャード2世は10年の雌伏期間を経て、復讐の機会をうかがいます。1396年にリチャード2世はフランスとの休戦協定を結び、フランス王シャルル6世の娘イザベラと再婚したことに、グロスター公ら訴追派貴族は再び反発しました。しかし、1397年7月、リチャード2世は先手を打ち、訴追派貴族をロンドンの晩餐に招待しました。彼らがそれを無視すると、国王の招宴拒否を理由に大逆罪を適用しました。ノッティンガム伯とボリングブルックはリチャード2世に懐柔され、訴追派貴族は分裂しました。アランデル伯は処刑され、ウォリック伯は終身刑となりました。

グロスター公は身柄を拘束され、裁判を受けるためにカレーに拘禁されましたが、間もなく何者かによって殺害されました。刺客を差し向けたのがリチャード2世であることは明らかだったため、露骨な手段で政敵を葬った国王に対し、イングランド貴族の間で抗議の声が噴出しました。これがリチャード2世の不人気に拍車をかけることになったと考えられています。

子女

エレノアとの間に1男4女を儲けました。

ハンフリー（1381年頃 - 1399年） - バッキンガム伯
アン（1383年頃 - 1438年） - 3度結婚
ジョーン（1384年 - 1400年） - 第5代タルボット男爵ギルバート・タルボットと結婚
イザベル（1385年/1386年 - 1402年）
* フィリッパ（1388年頃） - 夭折

トマスの死は大逆罪の審理中だったため、息子ハンフリーはグロスター公を襲爵することを許されず、グロスター公の称号は一代限りで廃絶となりました。ハンフリーはバッキンガム伯の称号を襲爵しましたが、その2年足らずで死去しています。

長女のアンは有力貴族のスタッフォード伯エドムンド・スタッフォードに嫁ぎ、後の初代バッキンガム公ハンフリー・スタッフォードを儲けました。その孫が薔薇戦争の時代にリチャード3世の興亡に大きく関わった第2代バッキンガム公ヘンリー・スタッフォードです。

紋章

グロスター公として、トマスはボーデュアが異なる王国の紋章を使用しました。

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