グロブリン

グロブリン

概要

グロブリンは、生体内に広く存在する重要なタンパク質群の総称です。かつては、水には溶けず、薄いアルカリ溶液や中性の塩類溶液に溶ける性質を持つタンパク質群を指しました。しかし、今日では、ヒトの血液中の液体成分である血漿に含まれる主要なタンパク質の一つとして、アルブミンやフィブリノゲンと並んで重要な役割を担うものを指すのが一般的です。時に、グロブリンという言葉が球状タンパク質全般を指すように用いられることもありますが、アルブミンもまた球状の構造を持つタンパク質ですが、グロブリンとは区別されます。血漿グロブリンの他に、卵白に含まれるオボグロブリンや、哺乳類の乳汁に見られるラクトグロブリンなども知られています。また、植物にも特有のグロブリンが存在します。

性質

グロブリンは、アルブミンと比較して一般的に分子量が大きく、純粋な水には溶けにくい性質を持っていますが、比較的濃度の薄い塩水には溶解します。血漿タンパク質を電気的に分離する電気泳動法を用いると、グロブリンはアルブミンに比べて電気的な性質（等電点）が高いため、電流を流した際に動きが遅いという特徴が見られます。この性質を利用して、血漿中のグロブリンをいくつかのグループに分離し、その量を測定することが行われます。

分類

血清タンパク質電気泳動法によって、血漿グロブリンは主に以下の4つのカテゴリーに分類されます。

α1グロブリン
α2グロブリン
βグロブリン
γグロブリン

特に、γグロブリンの一部は免疫グロブリンとして知られており、病原体などから体を守る「抗体」として働く、免疫系の中心的な役割を担っています。

生体内での機能と臨床的意義

グロブリンは、血管内の水分バランスを保つ上で重要な役割を果たす膠質浸透圧の維持に貢献しています。また、特定のグロブリンは、ホルモンや脂質、金属イオンなどの様々な物質を体内で運搬するキャリア（運び屋）としても機能します。さらに、γグロブリンに属する免疫グロブリンは、ウイルスや細菌などの異物に対する免疫応答に不可欠な抗体として作用します。

グロブリンが不足すると、これらの機能が損なわれることで様々な健康問題を引き起こす可能性があります。例えば、キャリア機能の低下、膠質浸透圧の低下によるむくみ（浮腫）、そしてγグロブリン、特に抗体が十分に作られなくなることによる免疫力の低下などが挙げられ、感染症にかかりやすくなるリスクが高まります。血清グロブリンの濃度や各分画のバランスは、様々な疾患の診断や病態把握の手がかりとなります。

分子量

グロブリンは種類によって分子量が大きく異なります。一般的に、αグロブリンは約93キロダルトン（kDa）と比較的小さく、最も重いγグロブリンは約1193キロダルトンにも達することがあります。この分子量の違いや電気的な性質の違いが、電気泳動法による分離パターンに反映されます。

産生場所

ヒトの血液中に存在するグロブリンは、主に肝臓で産生されるものと、免疫細胞（特に形質細胞）によって産生されるものがあります。例えば、アルブミンと共に肝臓で主に作られるものもあれば、γグロブリンのように免疫系で特異的に産生されるものもあります。

ヒト以外の存在

グロブリンはヒトだけでなく、他の動物種や植物にも広く存在しています。特に植物においては、エンドウ豆や大豆などのマメ科植物の種子に多く含まれるビシリンやレグミンなどが代表的な植物性グロブリンです。これらの植物性グロブリンは、種子が発芽・成長するための栄養源として、タンパク質を貯蔵する役割を果たしています。しかし、一部の人にとってはアレルゲンとなり、免疫グロブリンE（IgE）抗体と結合することでアレルギー反応を引き起こすことも知られています。

偽性グロブリンと真性グロブリン

グロブリンは、硫酸アンモニウム溶液への溶解性の違いによって、偽性グロブリンと真性グロブリンに分けられることがあります。偽性グロブリンは真性グロブリンよりも硫酸アンモニウム溶液に溶けやすく、また純水にも溶解するという性質を持ちますが、真性グロブリンは純水には溶解しません。

これらの多様な性質と機能を持つグロブリンは、生命維持において不可欠な役割を担うタンパク質群と言えます。

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