ケプラー10b

ケプラー10b

ケプラー10bは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡による観測から発見された太陽系外惑星です。2011年1月10日にその存在が公表され、太陽系外で初めて岩石質であると確認された惑星として大きな注目を集めました。この発見は、ハワイのW・M・ケック天文台における追跡観測によっても裏付けられています。

発見と命名

主星ケプラー10は、りゅう座の方向へ約560光年離れた位置にある恒星で、太陽とほぼ同じ大きさですが、推定年齢120億年の古い星です。ケプラー宇宙望遠鏡の観測視野内にあり、10番目に惑星を発見した星であることから「ケプラー10」と名付けられました。その周りを公転する最初の惑星として「ケプラー10b」と命名されました。惑星の発見には、主星の前を惑星が通過する際の光度変化（トランジット）を捉える方法が用いられました。ケプラー望遠鏡が2009年5月から2010年1月にかけて取得したデータから、約0.83日という非常に短い周期でトランジットが繰り返されていることが確認されました。トランジット法では惑星の半径は分かりますが、質量を知るには別の方法が必要です。そのため、2009年から2010年にかけて、W・M・ケック天文台のケックI望遠鏡でケプラー10の視線速度が測定され、ケプラー10bの質量の特定に成功しました。ケプラー10bは、ケプラー計画で発見された最初のトランジットを起こす地球サイズの候補天体の一つでした。公表後、エコノミスト誌は非公式な愛称として「バルカン」を提案しました。

特徴

ケプラー10bは、地球と同様に主に岩石と鉄で構成されていると考えられています。質量は地球の約3.3倍、半径は約1.4倍で、計算される密度は約5.8 g/cm³です。これは岩石質の惑星としては高い密度を示します。主星からの距離は極めて近く、太陽から水星までの距離のわずか23分の1程度しかありません。このため、惑星の昼側の表面温度は推定1560℃にも達する灼熱の環境です。主星との強い潮汐力により、常に同じ面を主星に向けている潮汐固定状態にあると推測されています。過去に発見された岩石質の可能性を持つ惑星CoRoT-7bと比較して、ケプラー10bは質量の測定精度が高く、その組成がより明確に示されました。後に行われた追跡観測では、惑星のアルベド（反射率）の測定に成功し、表面温度の推定精度向上に寄与しました。主星への近さと高温のため、ケプラー10bに生命が存在する可能性は極めて低いと考えられています。

科学的意義

ケプラー10bの発見は、太陽系外にも地球サイズの岩石惑星が存在することを実証し、その組成や内部構造の研究に新たな道を開きました。カリフォルニア大学バークレー校のジェフリー・マーシー氏は、この発見を「人類の歴史において最も科学的に重要な発見の一つ」と評価しました。ケプラー10bの研究は、太陽系外惑星探査における岩石惑星研究の先駆けとなり、その後の多くの地球型惑星候補発見へと繋がっています。

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