ケプラー1520

恒星 ケプラー1520とその惑星

ケプラー1520は、地球から見てはくちょう座の方向に位置するK型主系列星です。当初はKIC 12557548という名称で知られていました。この恒星が特に天文学者の関心を集めたのは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡による観測データから、その光度曲線が顕著な変動（減光）を示すことが判明したためです。光度の変動幅は約0.2%から1.3%にも及び、これは恒星の周囲を周回する惑星が、まるで彗星のように大量の物質を放出しながら急速に崩壊している可能性を示唆しています。

恒星の特徴

ケプラー1520自身は、太陽と比較していくつかの違いがあります。質量は太陽のおよそ76%、半径は約71%と、太陽よりやや小型のK型星に分類されます。その年齢は約44.7億年と推定されており、これは約46億年の太陽とほぼ同じ年代に誕生したことを示しています。表面温度は約4677ケルビンで、太陽の約5778ケルビンに比べると低温です。

地球から観測される見かけの明るさ、すなわち見かけの等級は15等級です。このため、非常に暗く、肉眼で観測することはできません。

惑星系 ケプラー1520b

ケプラー1520の周囲には、ケプラー1520bと名付けられた一つの太陽系外惑星が存在することが確認されています。この惑星の軌道は恒星に非常に近く、公転周期はわずか15.7時間という極めて短いものです。これは、これまで検出された太陽系外惑星の中でも最短クラスの周期の一つに数えられます。恒星表面から惑星までの距離は、ケプラー1520自身の直径のわずか約2倍程度と推定されており、この近さから惑星の表面温度は約2255ケルビンに達すると考えられています。

崩壊する惑星の謎

ケプラー1520bの最も特異な点は、その質量が急速に失われているらしいという観測結果です。この惑星は、約0.1地球質量、あるいは水星の質量のちょうど2倍程度であると推測されていますが、観測された光度変動のパターンから、約10億年ごとに地球一つ分の質量に相当する物質を失っていると考えられています。現在の速度で質量を失い続けると、約1億年から2億年という比較的短い期間で完全に崩壊してしまうと予測されています。

この惑星は、彗星のように塵やガスの尾を引きずっている可能性があると考えられています。ただし、その組成は彗星とは異なり、輝石や酸化アルミニウム（III）といった分子を含んでいると推測されています。この尾から放出される粒子の速度に基づいて、惑星の質量は0.02地球質量未満であるという上限が設けられています。これは、もし惑星の質量がこれより大きければ、その重力が強すぎて、観測されている速さで物質を失うことが難しくなるためです。

シミュレーションによると、惑星から放出された塵の密度は、惑星からの距離が離れるにつれて急速に減少することが示されています。さらに、この塵の尾は、恒星の光を直接吸収するだけでなく、光を散乱させる効果も持っていると考えられています。この散乱効果は、惑星とその尾が主星の手前を通過する際、わずかに恒星の明るさが上昇したり、その後わずかに減少したりといった光度変化に寄与している可能性が指摘されています。

発見と命名の経緯

ケプラー1520は、ケプラー宇宙望遠鏡による観測が始まる前は、2MASS J19235189+5130170という2MASSカタログ番号を持っていました。ケプラーの観測計画に取り込まれた際には、Kepler Input Catalog (KIC) 12557548として登録され、恒星の手前を通過（トランジット）する惑星候補が存在することが示唆されたことから、Kepler object of interest (KOI) 3794という番号も与えられました。

この惑星は、NASAのケプラーミッションによって発見されました。ケプラーは、恒星の明るさの一時的な低下、すなわち惑星が恒星の前を通過する際に発生するトランジット現象を検出することで、系外惑星を探査しました。ケプラー1520という恒星の名前は、ケプラー宇宙望遠鏡によって惑星の存在が確認された1,520番目の恒星であることに由来します。また、惑星名に付けられている接尾辞「b」は、その特定の恒星の周りで発見された最初の惑星に与えられる慣例に基づいています。ケプラー1520系では、現時点ではこの惑星一つのみが検出されているため、「b」という名称が使用されています。

このように、ケプラー1520とその惑星ケプラー1520bは、惑星が誕生から完全に消滅するまでの進化過程を理解する上で、貴重な観測データを提供する特異な系として、今後の研究対象となり続けています。

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