Kepler Input Catalog

Kepler Input Catalog (KIC)

Kepler Input Catalog（KIC）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用したケプラー宇宙望遠鏡の観測対象を選定するために構築された、広範な星表データベースです。このカタログは、Kepler Spectral Classification Program（SCP）を含む約1320万個の天体に関する情報を収録しています。

概要と作成背景

KICの作成以前、ケプラー宇宙望遠鏡が観測する視野内に存在する天体について、観測ターゲットを選定するために十分な詳細情報を含む包括的な星表が存在しませんでした。この不足を補うために、KICが開発されました。主に、2MASSやスローンデジタルスカイサーベイで使用されたグリズフィルターなどの測光観測に基づいて、SCPのデータが収集されました。KICは、ケプラーの観測視野を対象とした、数少ない包括的な星表の一つとなっています。

収録内容と規模

KICには、21等級までの約1320万個の恒星やその他の天体が登録されています。ただし、ケプラー宇宙望遠鏡が実際に詳細な光度曲線観測の対象とするのは、このカタログに登録された天体のうち約3分の1、すなわち約450万から650万個に限定されます。カタログに収録されている情報は多岐にわたり、各天体の質量、半径、有効温度、表面重力（常用対数値 log(g)）、金属量、そして星間減光といった、恒星の物理的性質や観測に関する詳細なパラメータが含まれています。これらの情報は、ケプラーの目的である太陽系外惑星、特に地球型惑星のトランジットを検出するための候補天体を選び出す上で不可欠でした。

KICとKepler Object of Interest (KOI)

KICに登録された天体のうち、ケプラー宇宙望遠鏡の観測によってトランジット（恒星の前を惑星が通過する際に発生する減光現象）と見られる周期的な光度変化が検出された天体は、Kepler object of interest (KOI) として特別にリストアップされます。例えば、KIC #10227020はトランジット信号が確認されたことから、KOI-730という名称でKOIに登録されました。

ただし、全てのKOIがケプラー宇宙望遠鏡自身の観測のみに基づいて指定されるわけではありません。ケプラーチーム以外の地上望遠鏡による観測など、他の方法でトランジット信号が確認された天体も存在します。このような場合、KICに登録されている恒星であっても、ケプラーによる検出ではないため、直接的にKOIとしては扱われないケースがあります。ケプラー78bなどがこの例に該当します。

特筆すべきKIC天体

KICには、通常の観測結果とは異なる特異な現象を示した天体も含まれています。中でも、KIC 8462852（通称Tabby's Starなど、複数の別名で呼ばれる）は特に注目を集めました。この恒星は、予測不能な非周期的な大きな減光を示す特殊な光度曲線が観測されたため、自然現象では説明が難しい可能性が指摘され、地球外生命体によるダイソン球のような巨大構造物によるものだとする仮説まで提唱され、大きな話題となりました。

KICは、ケプラーミッションの科学的成果を支える基礎データとして、太陽系外惑星研究をはじめとする天文学研究において重要な役割を果たしました。

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