輝石

輝石（きせき、pyroxene、パイロキシン）

輝石は、ケイ酸塩鉱物に属し、火成岩や変成岩に多く含まれる代表的な造岩鉱物です。この鉱物は、無色、緑色、褐色、黒色など多様な色を持ち、ガラス光沢を備えています。結晶の形は主に短柱状で、顕著な二方向の劈開が特徴です。輝石は角閃石と類似していますが、劈開の交差する角度が約90度であることで簡単に区別されます。

輝石の基本的な化学構成は、XY(Si,Al)2O6と表され、ここでXはCa、Na、Fe2+、Zn、Mn、Mg、Liなどの元素を、YはCr、Al、Fe3+、Mg、Mn、Sc、Ti、V、Fe2+を示します。さらに、この鉱物は結晶系によって直方輝石（斜方結晶系）と単斜輝石（単斜晶系）の2種類に分類され、その化学組成に基づいてさらに細かく分類されます。

輝石の命名と種類の整理

1988年に国際鉱物学連合（IMA）の輝石命名小委員会が輝石の分類と命名の整備を行い、合計21種の独立した輝石が認定されました。この中で、13種は固溶体の端成分として利用されています。特によく見ることができる輝石は、Ca-Mg-Fe系の8種とCa-NaおよびNa系の4種です。具体的な分類は次の通りです。

I. Mg-Fe輝石

1. 頑火輝石（Enstatite、エンスタタイト） - Mg2Si2O6
2. 鉄珪輝石（Ferrosilite、フェロシライト） - Fe2+2Si2O6
3. 単斜頑火輝石（Clinoenstatite、単斜エンスタタイト）
4. 単斜鉄珪輝石（Clinoferrosilite、単斜フェロシライト）
5. ピジョン輝石（Pigeonite） - (Mg,Fe,Ca)2Si2O6

II. Mn-Mg輝石

6. ドンピーコー輝石（Donpeacorite、ダンピコライト）
7. 加納輝石（Kanoite） - MnMgSi2O6

III. Ca輝石

8. 透輝石（Diopside） - CaMgSi2O6
9. 灰鉄輝石（Hedenbergite、ヘデンバージャイト） - CaFe2+Si2O6
10. 普通輝石（Augite、オージャイト） - (Ca,Mg,Fe)2Si2O6
11. ヨハンセン輝石（Johannsenite、ヨハンセナイト） - CaMnSi2O6
12. ピタダナイト（Petedunnite） - CaZnSi2O6
13. エシネアイト（Esseneite） - CaFe3+AlSiO6
14. デイビス輝石（Davisite） - CaScAlSiO6

IV. Ca-Na輝石

15. オンファス輝石（Omphacite）
16. エジリン普通輝石（Aegirine-augite） - (Ca,Na)(Mg,Fe2+,Al,Fe3+)Si2O6

V. Na輝石

17. ひすい輝石（Jadeite、ジェイダイト） - NaAlSi2O6
18. エジリン輝石（Aegirine、エジリン） - NaFe3+Si2O6
19. コスモクロア輝石（Kosmochlor） - NaCr3+Si2O6
20. ジャービス輝石（Jervisite） - NaSc3+Si2O6

VI. Li輝石

21. リシア輝石（Spodumene、スポジュメン） - LiAlSi2O6

新発見の輝石

その後、新たにナマンシル輝石（NaMn3+Si2O6）、ナタリー輝石（Na(V3+,Cr3+)Si2O6）、グロスマン輝石（CaTi3+AlSiO6）、久城輝石（CaAlAlSiO6）が発見されました。

使用されなくなった輝石名

輝石には、過去に使われていたが現在は廃止された名前もあります。具体的には、ウルバン輝石や古銅輝石、サーラ輝石などが挙げられます。

輝岩

輝石から主に形成される完晶質な超苦鉄質火成岩は輝岩（pyroxenite）と呼ばれます。

これらの情報は、輝石が固体地球科学における重要な鉱物であり、構成成分の理解が地質学研究において不可欠であることを示しています。

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