ケプラー1704b

ケプラー1704bとは

ケプラー1704bは、太陽系からおよそ2,800光年離れた、はくちょう座の方向にある恒星ケプラー1704の周りを公転する系外惑星です。その質量は木星の4倍を超え、スーパージュピターと呼ばれる巨大ガス惑星の分類に属します。この惑星の最も顕著な特徴は、その周回軌道が非常に極端な楕円形であることです。

発見の経緯

この惑星の存在は、2009年にアメリカ航空宇宙局（NASA）が打ち上げたケプラー宇宙望遠鏡による長期観測データから示されました。2013年には、多くの惑星候補の一つとして公表され、当時はKepler object of interest（KOI）カタログの識別名に基づき、「KOI-375.01」と呼ばれていました。しかし、この時点ではまだ確定的な惑星としては扱われていませんでした。

それから約8年の歳月を経た2021年、カリフォルニア大学の天文学者ポール・ダルバ氏を中心とする研究チームが、ハワイにあるW・M・ケック天文台の高性能望遠鏡を用いて、主星であるケプラー1704の約9.6年分にも及ぶ視線速度の変化を詳細に分析しました。この精密な観測データ分析によって、KOI-375.01の惑星としての存在が裏付けられ、「ケプラー1704b」という正式な確定名称が付与されるに至りました。

特異な特徴

ケプラー1704bは、確定された質量が4.15木星質量であり、木星を大きく上回るため、スーパージュピターに分類されます。その一方で、惑星のサイズ（半径）は木星と比べてわずかに大きい程度にとどまります。質量と半径から計算される密度は4.06 g/cm3となり、これは地球型惑星である火星（3.93 g/cm3）よりも高い値です。

ケプラー1704bは、主星から平均で2.026天文単位（約3億300万km）離れた軌道を約2.7年周期で回っています。しかし、この軌道は離心率が0.921という極めて高い値を示しており、非常に歪んだ楕円形を描いています。そのため、主星に最も近づく近点ではわずか約0.160天文単位（約2400万km）まで接近する一方、最も遠ざかる遠点では約3.892天文単位（約5億8000万km）まで遠ざかります。このような極端な距離の変化により、惑星の表面温度は近点と遠点の間で700ケルビン（摂氏約700度）以上もの大きな差が生じると推測されています。

天文学者たちは、ケプラー1704bが誕生初期の原始惑星系円盤において、ガスを取り込みながら成長する過程で、何らかの原因によって他の天体との重力的な相互作用を受け、現在の極端な楕円軌道へと弾き飛ばされた可能性が高いと考えています。もし重力散乱が起こらず、代わりに主星の近くまで移動していれば、高温の「ホット・ジュピター」になっていたかもしれません。このような背景から、ケプラー1704bは「Failed hot jupiter」（失敗したホット・ジュピター）と称されることもあります。

ケプラー1704bのように、極端な楕円軌道を持つ系外惑星は「エキセントリック・プラネット」と呼ばれることがあります。HD 80606 bなども同様に高い離心率を持つ惑星として知られています。2021年にケプラー1704bの発見論文を発表したダルバ氏らは、このような極端な軌道を持つ惑星が、惑星系形成や進化における惑星移動のメカニズムを検証するための貴重な研究材料になると指摘しています。

主星ケプラー1704

ケプラー1704bが周回する恒星ケプラー1704は、有効温度が5,745ケルビン（摂氏約5,472度）と太陽とほぼ同じであり、スペクトル分類ではG2型に区分されます。しかし、質量は太陽の約1.13倍、半径は約1.7倍、光度は太陽の約2.8倍と、いずれも太陽を凌ぐ規模です。これらの物理的特徴から、ケプラー1704は主系列星としての寿命を終えつつあり、次の進化段階へと移行している途上にあると考えられています。

ケプラー1704bのような特異な軌道を持つ系外惑星の発見は、惑星系の多様性や、惑星がどのように形成され進化していくのかという謎の解明に向けた重要な手がかりを提供しています。

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