ケルン大司教ブルーノ

ケルン大司教ブルーノ：聖職者、公爵、そして文化の庇護者

ケルン大司教ブルーノ（925年5月 - 965年10月11日）は、中世ドイツにおいてケルン大司教（在位：953年 - 965年）とロートリンゲン公（在位：954年 - 965年）という重要な地位を兼ねた人物です。彼は、東フランク王ハインリヒ1世とリンゲルハイムのマティルデの末子であり、皇帝オットー1世の末弟にあたります。その功績から、カトリック教会では聖人として崇敬されており、記念日は10月11日です。

生涯と治績

幼少の頃から聖職者になることが定められていたブルーノは、そのための教育を徹底的に受けました。951年、兄オットー1世によって宮廷礼拝堂の首席聖職者に任じられ、その才能を開花させます。953年には、28歳という若さでケルン大司教に任命されます。この背景には、当時の政治的な状況がありました。ロートリンゲン公コンラート赤公がオットー1世への反乱に加担したため、ケルン大司教位が空位となり、オットー1世はブルーノを任命することで、コンラートに対抗する勢力を確保しようとしたのです。ロートリンゲン公領の大部分がケルン大司教区に属していたことも、この人事が戦略的に重要であった理由の一つです。翌年、反乱が鎮圧されると、オットー1世はコンラートの公位を剥奪し、代わりにブルーノをロートリンゲン公に任命しました。

ブルーノは、ロートリンゲン公領全体を掌握した最後の公と言えるでしょう。959年、ゴドフロワとフレデリックという2人の地方領主が、それぞれ辺境伯として上ロートリンゲンと下ロートリンゲンに任命されました。ブルーノの死後、これらの辺境伯は公に昇格し、ロートリンゲンは分割されることになります。短期間（1033年から1044年）だけ、ゴテロン1世のもとで統一されましたが、その後は再び分割された状態が続きました。

大司教と公爵という聖俗両方の権力を掌握したブルーノは、伝記作家ルオツガーによって「大公」とも呼ばれ、オットー1世に次ぐ権力者として、ドイツ国内外に大きな影響力を行使しました。954年に西フランク王ルイ4世とユーグ大公が相次いで亡くなると、ブルーノは双方の義理の兄弟であり、それぞれの後継者であるロテール王とユーグ・カペーの伯父として、西フランク王国の摂政という重要な役割を担いました。961年以降は、オットー1世がイタリア遠征で不在の間、帝国の摂政を任されています。

965年、ランスで亡くなったブルーノは、自身が創建したケルンの聖パンタレイン修道院に埋葬されました。

ケルン大司教としてのブルーノ

ケルンにおけるブルーノの地位は、王侯に匹敵するほどのものでした。この時代に、教会諸侯としてのケルン大司教領の基礎が確立されたと言えるでしょう。オットー1世はブルーノとその後の大司教たちに対し、通常は王の特権とされる様々な権威を与えました。砦の建造、市場の設置、貨幣の鋳造、ユダヤ人からの特別税徴収、市場での取引税、ライン川沿いの関所からの税など、幅広い徴税権が含まれていました。3世紀後のヴォーリンゲンの戦いまで、ケルン大司教は聖俗両方の支配者としてこの地方に君臨し続けました。

ケルンにおけるブルーノの大司教宮廷は、当時のドイツにおける知的・芸術的中心地となりました。対照的に、皇帝オットー1世の宮廷は軍事的色彩が強く、文化的な雰囲気は乏しかったと言えます。この時期のケルンを中心とした文化活動は、「オットー・ルネサンス」と呼ばれることもあります。ケルンのブルーノの宮廷からは、次代のドイツ教会を率いる多くの指導者たちが輩出されました。

中世のケルンに対するブルーノの影響は非常に大きく、ケルン大司教宮殿の造営に加え、ケルン大聖堂をローマのサン・ピエトロ大聖堂に匹敵する規模に拡張しました（当時のサン・ピエトロ大聖堂は1248年に消失し、再建されて現在の姿となっています）。また、古いローマ時代の城壁とライン川に挟まれた区域を要塞化し、3つの教会堂を建立しました。トゥールのマルティヌスに捧げる聖堂、北側の市壁の外には使徒アンドレに捧げる聖堂、そして市の郊外南西には聖パンタレインに捧げられたベネディクト会の修道院です。

ブルーノはトロワから聖パトロクルスの聖遺物を移送し、964年にゾーストのパトロクロス大聖堂に埋葬しました。今日でも聖パトロクルスはゾーストで崇敬されています。

もう一度検索