辺境伯

辺境伯とは：国境を護る貴族の称号

辺境伯（へんきょうはく、ドイツ語: Markgraf、英語: Margrave）は、ヨーロッパにおける貴族の称号の一つです。その起源は、フランク王国の国境地帯に置かれた軍事地区（マルク）の長官に遡ります。ここでは、辺境伯の歴史的背景、役割、そしてその後の変遷について詳しく解説します。

辺境伯の起源と役割

辺境伯は、フランク王国において、国土防衛の最前線である辺境地区（マルク）の指揮官として誕生しました。異民族との接触地帯に位置するため、通常の伯爵（Graf, count）よりも広大な領域と大きな権限を与えられ、軍事・行政の両面で重要な役割を担いました。

フランク王国の時代以降、辺境伯は各地に置かれました。例えば、イングランドではケルト地域（スコットランドやウェールズ）との国境、フランス王国ではイスラム勢力と接するスペイン辺境領、ドイツではハンガリー王国（マジャール人）と接するオーストリアや、スラブ人と接するブランデンブルクなどが挙げられます。これらの地域では、辺境伯が国境防衛の要として活躍しました。

爵位としての辺境伯

時代が下るにつれて、辺境伯の称号は世襲の封建諸侯の爵位へと変化していきました。特にドイツにおいては、辺境伯は領邦君主として勢力を拡大し、重要な地位を占めるようになります。オーストリア辺境伯領はオーストリア大公国へと発展し、ブランデンブルク辺境伯領は選帝侯となり、後にプロイセン公国と同君連合してブランデンブルク＝プロイセンとなりました。

ドイツ以外の地域では、辺境伯に相当する称号として、フランスなどで侯爵（marquis）が用いられるようになりました。侯爵は、伯爵よりも上位の爵位として認識されています。

ドイツにおける辺境伯

ドイツにおいては、オーストリアやブランデンブルクの辺境伯が有力な領邦君主に成長した一方で、バーデン辺境伯領のように、必ずしも「辺境」とは言えない地域も存在しました。バーデン辺境伯領は、フランスとの境界に位置していましたが、古くから交易の要所として栄えた先進地域でした。また、フランケン地方のアンスバッハ、バイロイト両辺境伯領は、ホーエンツォレルン家の分家が相続したことで辺境伯の称号を帯びましたが、地理的にはドイツの中央部に位置していました。

辺境伯の終焉

オーストリア、ブランデンブルクの辺境伯がそれぞれ大公、選帝侯に昇格し、有力領邦であったバーデン辺境伯も1806年にバーデン大公国に昇格したことで、19世紀以降、ドイツ圏で辺境伯の称号を帯びる領邦は、名目的なモラヴィア辺境伯などを除いて消滅しました。

辺境伯の例

ブランデンブルク辺境伯
マイセン辺境伯
バーデン辺境伯
オーストリア辺境伯

関連項目

神聖ローマ帝国
フランク王国
爵位
伯爵
* 侯爵

もう一度検索