ケールシュタインハウス

ケールシュタインハウス：歴史と絶景が交差する場所

ケールシュタインハウスは、1939年にマルティン・ボルマンがアドルフ・ヒトラーの50歳の誕生日プレゼントとして、海抜1881mのケールシュタインの山頂近くに建設したティーハウスです。アメリカ軍によって「イーグルズ・ネスト」と名付けられ、現在ではアメリカを中心に多くの観光客が訪れる名所となっています。この建物は、総統大本営として知られるベルクホーフとは別の場所に建てられました。

建設の背景と概要

ケールシュタインハウスは、ドイツ・バイエルン州のベルヒテスガーデン近郊に位置しています。建設は1938年から始まり、わずか13ヶ月後の1939年に完成しました。標高1837mの場所に建てられ、山頂まではエレベーターと車両でのアクセスが可能でした。建設費は約3000万ライヒスマルクと推定され、2000人以上の労働者が動員されました。建設中に7人の労働者が事故で亡くなっています。

エレベーターの内装は真鍮や鏡で豪華に装飾され、ティーハウス内部の家具は、当時著名なインテリアデザイナーであるポール・ラズロが手がけました。山頂に位置するため、テラスからはベルヒテスガーデンの街並み、ケーニヒス湖、アルプスの山々など、息をのむような絶景を望むことができました。

ナチス要人の利用と歴史

ケールシュタインハウスは、ヒトラーがイタリアのムッソリーニとの会談に利用したほか、ナチス・ドイツの要人たちが頻繁に訪れました。しかし、ヒトラー自身は、高所恐怖症であったことや山荘の内装を気に入らなかったなどの理由から、10回ほどしか利用しなかったとされています。

1944年6月には、ヒトラーの愛人エーファ・ブラウンの妹グレートルが、SS将校ヘルマン・フェーゲラインとここで結婚式を挙げました。この結婚式には、マルティン・ボルマンも出席しています。第二次世界大戦末期の1945年4月25日、ケールシュタインハウスはイギリス空軍の爆撃目標となりましたが、目標が小さすぎたため爆撃は行われず、代わりにベルクホーフが爆撃されました。

1945年5月、ケールシュタインハウスはアメリカ軍第101空挺師団によって占領され、1960年まで連合軍の施設として使用された後、バイエルン州に返還されました。

現在のケールシュタインハウス

現在、ケールシュタインハウスは美しい景観と歴史的な背景から、世界中、特にアメリカからの観光客に人気のスポットとなっています。内部はレストランに改装され、ムッソリーニが寄贈した暖炉や連合軍兵士の落書きなどが残されています。徒歩で山を登る（約2時間）以外にも、ベルヒテスガーデン駅から観光バスを利用してアクセスできます。ただし、山頂までの専用道路は事故防止のため一般車両の通行が禁止されています。

参考文献

Josef Geiß, 「obersalzberg ; Die Geschichte eines Berges von Judith Platter bis Hitler」, Verlag Anton Plenk
「The Eagle's Nest」, Verlag Anton Plenk, ISBN 3-922590-17-9
アレクサンダー・シュタールベルク著、鈴木直訳「回想の第三帝国〈下〉―反ヒトラー派将校の証言1932‐1945」, 平凡社, 1995年, ISBN 978-4582373363

外部リンク

ケールシュタインハウス公式ウェブサイト

この場所は、かつての歴史的な出来事を静かに語りながら、訪れる人々に壮大な景色を提供し続けています。

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