ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ

ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ：激動の時代を駆け抜けたギリシャの政治家

ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ（1952年6月16日 - ）は、ギリシャの政治家であり、全ギリシャ社会主義運動（PASOK）の党首、首相、外務大臣を歴任し、社会主義インターナショナル議長を務めました。祖父と父もギリシャの首相を務めたという、政治家一家のサラブレッドです。ギリシャ国内では、短縮形のヨルゴスという愛称で親しまれています。

生い立ちと教育

1952年、アメリカ合衆国ミネソタ州セントポールで誕生。父アンドレアスは当時、大学教員としてアメリカに滞在していました。母はアメリカ出身のマーガレット・パパンドレウで、アムハースト大学卒業後、ストックホルム大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）、ハーバード大学で教育を受けました。ゲオルギオス自身もアムハースト大学で社会学の学士号、LSEで開発社会学の修士号を取得しています。ストックホルムでは移民問題の研究にも携わり、ハーバード大学では外交研究のフェローを務めました。ギリシャ語、英語に加え、スウェーデン語も堪能です。

アムハースト大学時代のルームメイト、アントニス・サマラスは後に政界入りし、新民主主義党の党首としてパパンドレウと対峙することになります。

父アンドレアスは、1939年にギリシャから亡命した後、1959年まで帰国できませんでした。家族は父の仕事に伴い、各地を転々としました。1974年にギリシャの軍事政権が崩壊すると、ゲオルギオスはギリシャへ帰国し、父が率いるPASOKに参加して政治活動を開始。党首の息子という立場もあり、1984年には中央委員会のメンバーとなるなど、急速に昇進しました。

政治経歴

1981年に国会議員に初当選。同時に、父アンドレアスがギリシャの首相に任命されています。1985年には文化省次官、1988年には教育・宗教相、1999年には外務大臣に就任。アテネオリンピック招致を担当する国務大臣も務めました。

人権尊重への貢献により、数々の賞を受賞。外務大臣としても高い評価を受け、父とは異なり、刺激的な言動を避け、トルコとの関係改善、アルバニア・ブルガリアとの交流促進に尽力しました。キプロス問題では、ギリシャの基本姿勢を維持しつつも、打開策を模索しましたが、成功には至りませんでした。1990年代前半には、マケドニア共和国問題にも対応しています。

2003年、雑誌「ヨーロッパの声」でその年を代表するヨーロッパ人に選出。フランスのル・モンド紙は、彼をギリシャ・トルコ関係の立役者と称えました。

PASOK党首として

ギリシャ政界では、親から子へと政治的地位が受け継がれることが少なくありません。祖父と父という偉大な政治家を背景に持つパパンドレウも、PASOKの党首就任を期待されていました。2004年1月、コスタス・シミティス党首の辞任を受け、2月にPASOKの党首に就任。政権奪還を目指しましたが、2004年、2007年の総選挙では新民主主義党に敗北しました。

首相として

2009年10月4日の総選挙でPASOKが勝利し、10月6日に首相に就任。しかし、2010年に財政赤字の隠蔽を公表したことで、ギリシャ経済は深刻な危機に陥ります。3000億ドルという巨額の対外債務を抱え、国家財政は破綻寸前。パパンドレウは、「今回の信頼喪失で我々の主権の一部が失われた」と述べ、ヨーロッパ連合に政治的支援を要請せざるを得ない状況となりました。

ヨーロッパ連合と国際通貨基金から1100億ユーロの支援を受けましたが、2011年には再び危機が深刻化し、追加支援策が策定されました。しかし、ギリシャに課せられた厳しい財政緊縮策は、野党や国民からの強い反発を招き、支持率も低迷。パパンドレウは、野党との大連立を条件に退陣を表明しましたが、協議は決裂。内閣改造を行い、ライバルのエヴァンゲロス・ヴェニゼロスを財務大臣に起用し、挙党体制を構築。改造内閣は議会で信任されました。

2011年10月、ユーロ圏首脳は、ヨーロッパの民間銀行が保有するギリシャ国債の元本を5割削減する救済案に合意しましたが、パパンドレウは突如、この救済案の是非を国民投票にかける意向を表明。これは政権基盤強化のための政治的な賭けであると批判を浴び、フランスやドイツをはじめとする各国からの強い反発を招き、撤回を余儀なくされました。11月には内閣信任決議が可決されたものの、新民主主義党党首のアントニス・サマラスとの連立政権合意に至り、パパンドレウは首相を辞任することとなりました。

2012年3月にはPASOK党首も辞任し、ヴェニゼロス財務相が後任として党の再建を担うことになります。2015年1月には、PASOKを離党し、新党「民主社会主義運動」（KIDISO）を立ち上げ総選挙に挑みましたが、議席獲得には至りませんでした。

激動の時代にギリシャの舵取りを担ったゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ。その功績と苦難は、現代ギリシャ政治史において重要な位置を占めています。

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