猩紅熱

猩紅熱（しょうこうねつ）とは

猩紅熱は、A群β溶血性連鎖球菌の産生する毒素によって引き起こされる感染症です。主に小児に発症し、発疹を伴うのが特徴です。かつては法定伝染病に指定され恐れられていましたが、抗生物質の開発により治療が容易になったため、現在は感染症法上の届け出対象疾患ではなくなりました。現在では、A群溶血性連鎖球菌咽頭炎（溶連菌感染症）として診断・治療されることがほとんどです。

概要

猩紅熱は、A群β溶血性連鎖球菌が産生する発赤毒素（ディック毒素）によって発症します。この毒素に対する免疫がない人に発症します。A群溶血性連鎖球菌咽頭炎の1つのタイプであり、2歳から10歳までの小児に多く見られます。幼稚園や保育園、小学校などの小児が集まる場所で集団発生することがあります。また、中耳炎、腎炎、リウマチ熱などの合併症を引き起こすこともあります。

1957年（昭和32年）には日本で大流行し、報告されただけでも1万4500人の患者が発生し、そのうち40人が死亡する事例もありました。

感染経路

主な感染経路は飛沫感染です。感染者の咳やくしゃみによって空気中に放出されたウイルスを吸い込むことで感染します。

症状

猩紅熱は、通常、レンサ球菌咽頭炎に続いて発症します。

潜伏期：感染から発症までの期間は2日から4日です。
前駆期：発症初期には、高熱、咽頭痛（上気道炎）、頭痛、四肢痛、悪寒などの症状が現れることがあります。
発疹期：発症から1週間程度で、全身に小さな紅色の発疹が現れます。舌が腫れて「いちご舌」と呼ばれる状態になることもあります。
落屑期：発症から2週間から3週間後には、手のひらや足の裏から皮膚が膜のように剥がれ落ちます。

感染後、免疫反応としてリウマチ熱や糸球体腎炎を併発することがあります。

主な合併症

猩紅熱の主な合併症には以下のものがあります。

化膿性疾患：肺炎、髄膜炎、敗血症など。
非化膿性疾患：リウマチ熱、急性糸球体腎炎など。

予防

猩紅熱の予防には、以下の点が重要です。

患者との濃厚接触を避ける。
うがい、手洗いを励行する。

治療法

猩紅熱の治療には、主に抗生物質が用いられます。

第一選択薬はペニシリン系の抗生物質です。
ペニシリンにアレルギーがある場合は、エリスロマイシンやクリンダマイシンなどが用いられます。
治療期間は通常10日間です。

関連法規

猩紅熱は、感染症法に基づき、定点報告対象の5類感染症に分類されています。

参考文献

国立感染症研究所

関連項目

異型猩紅熱：猩紅熱に似た症状を示す疾患。
溶連菌感染症：猩紅熱の原因となるA群溶血性連鎖球菌による感染症。
スーパー抗原：猩紅熱の原因となる毒素。
若草物語：物語の中に流行病として登場する。
* アンナ・カレーニナ：オブロンスキイ家の子供たちが猩紅熱にかかるという描写がある。

参考画像

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