ゲッカビジン

ゲッカビジン (月下美人)

ゲッカビジン、学名 Epiphyllum oxypetalum はサボテン科クジャクサボテン属に属し、メキシコの熱帯雨林を原産地とする常緑の多肉植物です。この植物は、その美しい白い花が夜に咲くことから「ナイトクイーン」とも呼ばれています。日本では、市場に流通しているほとんどのクジャクサボテンが交配種であるのに対し、ゲッカビジンは原種に近い形態を保っています。また、国際的な種の取引規制であるワシントン条約においても、その保護対象に指定されています。

特徴

花

ゲッカビジンのつぼみは、茎が1メートルから2メートルに達すると形成されます。花は夕方に開花し、次の朝にはしぼんでしまいます。この花は直径20〜25センチほどの白い花冠を持ち、独特の芳香が特徴です。開花時には、小型哺乳類の訪問にも耐える強度を持ち、植物間の送粉を促進するための生態的特徴が見られます。特に、ヘラコウモリが媒介受粉をすることが知られており、開花中は温かい香りを放ちます。日本では、ゲッカビジンは6月から11月の間に開花し、条件が整えば数回咲くこともあります。

開花した花やしぼんだ花は、食用として利用できます。咲いている花を焼酎に浸けることで保存が可能で、台湾ではスープの具に活用されることもあります。

茎

このサボテンの茎は、主に扁平な葉状茎で構成され、しばしば鞭状の茎も成長します。葉状茎は波状の縁を持ち、退化した刺を持っています。成長点は茎の先端や刺座にあり、ここから新しい茎やつぼみが育ちます。

果実

日本に古くから生育していた株は、単一のクローンから繁殖されてきたため、果実の実る率は低いものでした。しかし1980年代に野生のクローンが導入されたことにより、現在では複数の異なるクローンが流通し、人工授粉によって成熟した果実が得られるようになりました。果実は赤い表面と白い果肉を持ち、甘味が強いのが特徴です。

生育環境

ゲッカビジンは多肥多湿には弱く、根腐れしやすいため、栽培には注意が必要です。また、元々は着生植物であり、大木に宿りながら生育するため、環境としては温暖な気候を好みます。適切な栽培条件を確保すれば、温暖な地域では地植えも可能であり、ミズゴケを使った栽培方法もあります。

文化と俗説

ゲッカビジンは7月19日の誕生花としても知られています。多くの園芸家やガーデニング愛好者に人気があり、開花時にはメディアでも話題になることがあります。しかし、花の開花に関する多くの俗説も存在し、たとえば「同一株から分かれたため同じ日に咲く」や「1年に1度しか咲かない」といった誤解も多く見られます。実際には、これらは育て方や環境に依存し、手入れをすることで複数回咲くことができます。

関連種

ゲッカビジンに類似する夜咲きのサボテンたちには、クジャクサボテンやシャコサボテン、イースターカクタスなどがあります。特に、ドラゴンフルーツとして知られるヒモサボテンも、同じサボテン科の仲間で、さまざまな特徴を持っています。

ゲッカビジンの美しさや栽培の楽しさは、多くの人々に喜ばれ、これからも愛され続けることでしょう。

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