ゲバ字

ゲバ字とは

ゲバ字（ゲバじ）は、1960年代から70年代にかけて日本の学生運動で、ビラや立て看板などに使用された独特な書体を指します。ゲバ文字、全共闘文字、全学連文字、トロ字とも呼ばれます。

用語の由来

「ゲバ」はドイツ語の「Gewalt（暴力）」に由来します。当時の新左翼は、国家権力の暴力と自らの運動における暴力を区別するためにこの言葉を多用しました。「トロ字」の「トロ」はトロツキストを指し、日本共産党が新左翼を批判する際に用いた呼称に由来します。

ゲバ字の特徴

ゲバ字は、ガリ版印刷での視認性を高めるため、以下のような特徴を持ちます。

角張った字形: 文字の線を直線的にすることで、ガリ版でも潰れにくく、判読性を高めています。
略字や記号の多用: 画数を減らすため、漢字の略字、カタカナ、ローマ字、「X」などの記号を積極的に使用しています。例えば、「闘争」を「斗争」、「労働」を「労仂」などと表記します。
統一された規格: 筆跡による執筆者の特定を防ぐため、党派やグループごとに一定の規格がありました。

ゲバ字の広がりと影響

ゲバ字は、ビラや立て看板だけでなく、旗やヘルメット（ゲバヘル）にも使用され、学生運動の象徴的な存在となりました。また、文化大革命の大字報の影響も受けています。2000年代以降、ワープロソフトの普及により使用は減少しましたが、新左翼系の団体の一部では現在も使用されています。また、インターネット上ではゲバ文字フォントも公開されています。

ゲバ字の起源

ゲバ字の登場以前にも、戦前の政治運動でビラやポスターに独特の文字が使用されていました。これは「左翼不定文字」と呼ばれ、治安維持法下での活動を迅速に行う目的や、見る人に強い印象を与えるために使用されました。

ゲバ字の具体例

「闘争」→「斗争」
「万歳」→「万才」
「労働」→「労仂」
「職業」→「耺業」
「議会」→「言ギ会」
「寮」→ （宀かんむりの下に「R」)
「反戦」→「反战」
「協」→ 「𫝓」
「人権」→「人权」

ゲバ字が登場する作品

ゲバ字は、映画や音楽など、様々な作品にも登場しています。

映画『社長えんま帖』(1969年): 女優の岡田可愛がゲバヘルを着用しています。
ミュージシャン「ザ・タイマーズ」: ゲバヘルをトレードマークとしています。
『パワー・トゥ・ザ・ピープル』（1971年）： ジョン・レノンがゲバヘルを着用したジャケットが有名です。
『表徴の帝国』(1970年): ロラン・バルトがゲバヘルを「暴力の表現体」として取り上げています。
『実録・連合赤軍・あさま山荘への道程』（2008年）: 立て看板やスローガンにゲバ字が使用されています。

関連事項

書体: ゲバ字は独特な書体の一つです。
日本の新左翼: ゲバ字は学生運動の文化を象徴するものです。
ゲバ棒: 学生運動で使用された棒です。
アジビラ: ゲバ字がよく使われた宣伝ビラです。
アジ電車: 車体にゲバ字でスローガンが書かれた電車です。
立て看板: ゲバ字がよく書かれた看板です。
公団文字: ゲバ字と同じ時代に生まれたフォントです。
機械彫刻用標準書体: ゲバ字と同じ時代に生まれたフォントです。

外部リンク

ゲバ文字フォント: インターネット上で公開されているゲバ文字フォントです。
* 全学連漢字 グリフウィキ: ゲバ字のグリフ（文字の形）に関する情報サイトです。

ゲバ字は、単なる書体ではなく、1960年代から70年代の学生運動の熱気と時代背景を色濃く反映した文化遺産と言えるでしょう。

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