ゲミンガ

ゲミンガ (Geminga)

ゲミンガは地球から約815光年の距離に位置し、ふたご座の方向にあるガンマ線を放出する天体です。この天体はほとんど電波を発しない中性子星であるとされ、特にその正体は過去に長い間謎に包まれていました。

ゲミンガの起源と発見

ゲミンガの形成は、約30万年前に大質量の星がその終末を迎え、超新星爆発を起こした際に遺された中性子星によります。1972年、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のガンマ線宇宙望遠鏡「SAS-2」によって初めて発見されましたが、その正体は長い間明らかにされませんでした。

1991年、ドイツ航空宇宙センターのX線観測衛星「ROSAT」によって、軟X線放射の周期性が発見され、ゲミンガがパルサーであることが明らかになりました。これは、0.237秒の周期でパルスを発信する特性を示しており、この発見はゲミンガを理解する上で画期的なものでした。

局所泡と星間物質

ゲミンガの前駆天体である超新星爆発の影響で形成された「局所泡」と呼ばれる低密度の星間物質が、周囲に広がっています。この局所泡は、単発の超新星爆発によって生じたものではなく、プレヤデス運動星団内での複数の超新星爆発によって形成された可能性が高いとされています。これに関連して、アレシボ天文台によって発見された微小な星間塵も、ゲミンガとの関連性を示す重要な証拠とされています。

観測の歴史

ゲミンガは、最初の未確認のガンマ線源であり、他の天体とは関連付けることができませんでした。初期の観測では、1972年にSAS-2でガンマ線信号の59秒の脈動が報告されましたが、その検出数が少なかったため、統計的に有意ではないとみなされました。

その後も様々な観測が行われ、1980年代にはHEAO-2やコンプトンガンマ線衛星による観測が進められましたが、正体はわからないままでした。しかし、1991年にROSATによる観測で、ゲミンガの位置で50MeVの軟X線放射が確認され、この時点でゲミンガが中性子星である可能性が極めて高いとされました。

ゲミンガの性質

ゲミンガは、太陽の約4.2倍のエネルギーを放出しており、178.2秒/年という高い固有運動を持ち、約205km/sで空間を移動しています。また、ゲミンガと星間物質との衝突によって生じたバウショックが観測され、これは非対称な爆発によって生じたものであると考えられています。

現在の位置は地球から約815光年離れており、環境的にも比較的近い距離での超新星爆発によって生まれたことが示されています。

名前の由来

「Geminga」という名前は、「ふたご座にあるガンマ線源」を意味する言葉を短縮したものであり、イタリアのミラノ方言で「存在しない」という意味の「gh'è minga」にも由来しています。これは、ゲミンガを最初に観測した際、天体の具体的な様子が確認できなかったために付けられました。2022年には、国際天文学連合（IAU）がこの天体をPSR B0633+17という名称に正式に認定しました。

太陽系外惑星の可能性

1998年には、ゲミンガからのガンマ線観測をもとに太陽系外惑星の存在が示唆されましたが、その後、ノイズによるアーティファクトであるとされており、現在は惑星の存在について否定されています。


ゲミンガは、宇宙の探求において興味深い存在であり、今後の研究によってさらなる知見が得られることが期待されています。

もう一度検索