ゲルト・クナッパー

生涯

ゲルト・クナッパーは、1943年にドイツのヴッパータールで生まれました。幼少期から絵画に親しみ、当初は金細工職人を目指していましたが、戦後の復興期に室内装飾の塗装工として3年間修行を積みました。しかし、芸術への情熱を諦めきれず、18歳で世界放浪の旅に出ます。

ヨーロッパ、中東、インド、そしてアメリカ大陸へと、36ヶ国を巡る旅の中で、彼は多様な文化に触れ、見識を深めました。当初、日本への訪問も計画していましたが、1964年の東京オリンピック開催時期と重なることを避けるため、一旦見送りました。ニューヨークでは塗装工として働いた後、肖像画家の助手として働きながら、美術館で南米や東洋の陶器を研究し、茶道を知るきっかけを得ました。

その後、アラスカでエスキモーの商業芸術家として働いた後、加藤唐九郎に会うために1967年に初めて日本へ渡りました。瀬戸の陶芸家、鈴木青々に師事した後、益子で人間国宝の濱田庄司を訪ねます。資金が尽きたためドイツへ帰国し、1年半の修行の後、イギリスのセント・アイヴスでバーナード・リーチを訪ね、島岡達三を紹介されます。島岡の助言を受け、1969年に栃木県益子町に移住し、塚本製陶所で修行後、外国人として初めて益子で窯を築き独立しました。

ハワイ大学での講演やホノルルでの個展開催など、精力的な活動を行っていましたが、「外国人には日本の陶芸はわからない」という批判的な声も耳にしました。しかし、1971年、毎日新聞創刊100年記念の第一回日本陶芸展で文部大臣賞を受賞し、その作品は「日本の精神を最も良く表現する」と高く評価され、一躍その名が知られるようになりました。この受賞を機に、クナッパーは日本での作陶活動に生涯を捧げることを決意します。

同年より、日本文化庁主催の現代日本陶芸展巡回展に参加するなど、国内外で活発な活動を展開。益子で出会ったキエ子と結婚し、日本で家庭を築きました。1974年には、茨城県大子町に居を移し、古民家を修繕しながら、自給自足の生活を送り、作陶に励むという環境を手に入れました。

1975年には、ドイツ・ハンブルクの国立工芸館での「島岡達三とゲルト・クナッパーの2人展」や、韓国、沖縄での展示会を開催。その後も、1986年に日本現代工芸美術展で内閣総理大臣賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しました。2000年から2003年には、NHK地域放送文化賞を受賞。また、ドイツでも「島岡達三とゲルト・クナッパー」展を複数回開催し、国際的な評価を確立しました。

2007年には、自宅の長屋門を改装して「ゲルト・クナッパーギャラリー」を開館。晩年まで精力的に作陶活動を行い、2010年には日独交流150周年記念・日独友好賞を受賞し、茨城県の文化の振興/功労賞も受賞しました。

2012年11月2日、病のため70歳で逝去しましたが、彼の作品は今もなお多くの人々を魅了し続けています。

作風

クナッパーの作風は、世界各地の文化から影響を受け、伝統的な日本の陶芸の技法と、彼自身の独創的な感性が融合した、力強くも繊細な造形が特徴です。特に、益子焼の土と釉薬を用いた作品には、彼の陶芸に対する情熱と、日本への深い愛情が込められています。

弟子

篠崎英夫

参考文献

濱田庄司,塚田泰三郎『カラー日本のやきもの 15 益子』株式会社淡交社、1975年。
光芸出版編集部 編『最新 現代陶芸作家事典　作陶歴 技法と作風』株式会社光芸出版、1987年。
ゲルト・クナッパー『ゲルト・クナッパー』講談社　1989。

外部リンク

Gerd Knäpper Gallery
ドイツ人陶芸家・造形作家 ゲルト・クナッパー (2011年1月9日)
Knäpper, Gerd | Capriolus Contemporary Ceramics - Gallery
“Kaiougi（貝扇）　ゲルト・クナッパー”. 茨城県陶芸美術館デジタルアーカイブ. 2023年3月31日閲覧。
スクーピーレポート「大子町で暮らした陶芸家 ゲルト・クナッパー」〈大子町〉IBS（2015.6.15） - YouTube
ゲルト・クナッパー — Google Arts & Culture

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