コエゾゼミ

コエゾゼミ（小蝦夷蝉）

コエゾゼミ（学名: Lyristes bihamatus）は、カメムシ目（半翅目）に属するセミ科の昆虫です。分類については、以前はTibicen属とされていましたが、学名の命名に関する規約に基づき、現在はLyristes属として扱われています。

分布

本種は、日本国内では北海道、本州、四国、佐渡島に生息しています。本州における確認の西端は広島県です。日本国外では、サハリンや南千島にも分布しています。エゾゼミがかつて中国大陸方面から日本列島へ移動してきたと考えられているのに対し、コエゾゼミはサハリン方面から渡来した昆虫であり、純粋な北方系のセミとされています。日本に生息する北方系のセミは、このコエゾゼミとエゾチッチゼミの2種類のみです。

形態

成虫の体長は約34〜38mm、全長は48〜54mm程度で、前翅を広げると約90〜95mmになります。エゾゼミやアカエゾゼミに比べるとやや小ぶりで、キュウシュウエゾゼミやヤクシマエゾゼミに近いサイズ感です。外見上の特徴として、胸部背面にはっきりとしたW字型の黄色い斑紋が見られます。また、前胸背の外側にある黄色い帯状の模様は、通常は黒い部分によって左右が分断されていますが、稀に途切れることなく繋がっている個体も確認されています。

生態

コエゾゼミは森林性のセミで、昼間でも比較的薄暗い森や山の中で生活するのが一般的です。生息する標高は地域によって異なり、北日本では平野部でも見られますが、本州の中部より西では標高900mから1500m程度の山地に多く生息しています。成虫は例年7月上旬頃から姿を見せ始め、8月末頃まで活動します。

エゾゼミが主に針葉樹を好むのに対し、コエゾゼミは特定の樹種への強い偏好は少なく、ブナ、ミズナラ、エゾマツ、さらにはシラカバやナナカマドなど、広範な樹木に止まります。止まる際には頭を地面側に向けて逆さになることが多いです。鳴き声は「ジー」という連続音で、アカエゾゼミの鳴き声と非常によく似ています。震えるような独特のビートが含まれるエゾゼミの鳴き声とはやや異なりますが、両種を鳴き声だけで明確に聞き分けるのはしばしば困難です。交尾の際にはV字型の姿勢をとることが観察されており、これはエゾゼミと同様の特徴です。

従来、コエゾゼミは森林内部に限定して生息すると考えられていましたが、近年ではその生息環境が変化しつつあるという報告があります。例えば長野県北部では、人手が加えられた公園のような場所でも成虫が発生している事例が見られます。また、北海道においても、そうした人工的な環境での発生例が増加傾向にあると報告されています。この変化は、コエゾゼミが街路樹としても広く利用されているシラカバやナナカマドといった樹木も好む性質が関連している可能性が指摘されています。北海道の知床半島の一部地域では、カラマツやトドマツ、アカエゾマツなどの人工林でコエゾゼミの幼虫が多く見つかり、この幼虫を餌とするためにヒグマが人工林を利用する様子が観察されています。

ただし、札幌市などの都市部中心街において、このセミの個体数が増加しているという明確な報告は、現時点では確認されていません。

※本記事は提供された情報を基に作成されています。学術的な詳細や最新の研究成果については、専門資料をご確認ください。

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