コギクザメ

コギクザメ (Echinorhinus cookei)

コギクザメは、キクザメ目に属する深海性のサメで、特に太平洋の冷たい海で見られます。この種は水深100メートルから650メートルの間を好み、時にはモントレー湾などの浅い海域にも現れます。このサメは、全長が最大で4メートルに達し、体全体がトゲ状の楯鱗に覆われていることが特徴です。

生息環境と行動

コギクザメは主に夜行性で、昼間は深海で静かに休んでいますが、夕方になると浅い海域に向かいます。各個体は活動範囲が狭く、ほとんどの場合、自身の限られた環境内で生活しています。主な食糧源として、硬骨魚（カレイやサバなど）、軟骨魚（若いカグラザメなど）、および頭足類（イカやタコ）を捕食します。繁殖形式は卵胎生であり、妊娠中のメスは体内で114匹の子を育てることが確認されています。この数字はサメの一産における子の数としては非常に多い部類に入ります。

コギクザメは、海底近くを泳ぎながら底生の生き物を摂取します。日周鉛直移動を行い、昼は深海で休息し、夕方から夜にかけて低い水深に移動する行動が観察されています。モントレー湾では、複数の個体が群れて行動する様子も確認されており、これによって効率的に餌を捕らえていると考えられます。体の構造から、吸い込み型の摂食スタイルをとるため、特に軟体動物を効率的に捕まえることができるのです。

形態の特徴

コギクザメは、円筒形でやや弛んだ体型を持ち、短く平らな頭部や大きな口が特徴です。口は大きな円弧状をしており、歯列において特有のナイフ状の鋭い歯が並んでいます。個々のトゲ状の楯鱗は、基部から周囲に放射状の溝が走り、文字通り「トゲのある」印象を与えています。また、体色は一般的に褐色または灰色で、しばしば紫色がかっています。腹側は比較的明るく、特に口周りでその色の違いが目立ちます。

分布と生息域

このサメの広範囲な分布は、西太平洋には日本、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、パラオ、トンガ、ハワイ、ギルバート諸島などが含まれ、東太平洋ではエルサルバドルからガラパゴス諸島やペルー沖、チリ沖にかけて確認されています。日本では、1983年に熊野灘での初報告があり、それ以前に同定されていたキクザメが実際にはコギクザメであった可能性が指摘されています。特に低温の環境を好み、生息環境は通常水深100メートルから650メートルの範囲とされていますが、さらに深い場所にも生息することが考えられています。モントレー峡谷では、水深15メートルでの発見もあります。

人間との関係および保全状態

コギクザメは、人間には危害を加えることはほぼ無く、商業的には底引き漁などで偶発的に捕獲されることがありますが、肉は食用に適さないため、その商業的価値は調査不足とされています。国際自然保護連合（IUCN）は、この種の保全状態をデータ不足（DD）と評価し、その生息域のまばらさや深海漁業の拡大が今後の影響を及ぼす可能性があるとしています。日本においても環境省のレッドリストで情報不足（DD）としてカテゴライズされています。コギクザメへの理解を深めるため、更なる研究や保護活動の必要性が求められています。

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