キクザメ

キクザメ (菊鮫) の概要

キクザメ（学名：Echinorhinus brucus）は、軟骨魚綱に属し、キクザメ目キクザメ科に分類される珍しいサメの一種です。このサメは熱帯地域や温帯地域の海に広く分布しており、特に東太平洋を除く全世界の海域に見られます。ただし、非常に稀にしか目撃されず、通常は400メートルから900メートルの深海で生活していますが、時には浅瀬に姿を現すこともあります。

外見的特徴

キクザメの体形は太くて頑丈な円筒状をしており、頭部はわずかに平らになっています。鼻先は丸みを帯びていて、大きな鼻孔があります。目には瞬膜がなく、目の後方には噴水孔が存在します。口は広がり、両端にわずかな溝があります。

歯は上顎に20から26、下顎に22から26の列を持ち、鋭利なナイフ状の形をしています。体には5対の鰓裂があり、最も尾側に位置するものが最も長いです。キクザメの胸鰭は短くて角張っており、腹鰭は相対的に大きいです。背鰭は2つあり、最初の鰭は腹鰭と同じ高さに位置します。興味深いことに、臀鰭はなく、尾鰭は非対称です。

皮膚は数ミリメートルの厚さの悪臭を放つ粘液で覆われています。この粘液の表面には、最大で1.5センチメートルほどの大きさの楯鱗が不規則に分布しており、棘状の形状をしています。キクザメは通常、茶色または黒色の体色を持ち、時折紫色の光沢が見られます。最大で体長は3.1メートルに達し、最も重い個体は200キログラムに達しました。

生息地と分布

キクザメの目撃情報は極めて限られており、主に温帯および熱帯海域に見られます。特に東大西洋や西インド洋での記録が多く、北海から地中海、インド洋のモザンビークにかけて分布しています。西大西洋では、アメリカのマサチューセッツ州やノースカロライナ州などからの記録があります。また、インド太平洋地域ではオマーン、インド南部、南オーストラリア、ニュージーランドでも確認されています。

通常、キクザメは大陸棚や大陸縁辺部の水深400メートルから900メートルに生息していますが、時には水深20メートルの浅い場所にいることもあります。夏には水深20メートルから200メートルの範囲に移動することが考えられています。

生態と食性

キクザメは動きが遅く、主に自分より小さなサメや硬骨魚、カニを捕食します。大型の咽頭を利用して、餌を吸い込むようにして捕まえると考えられています。本種は卵胎生であり、メスは通常15匹から52匹の子を産むとされています。産まれた子は40センチメートルから50センチメートルの大きさに成長しますが、具体的な成熟体長についてはまだ明らかではありません。オスが1.5メートル、メスが2.1メートルで成熟するとされています。

人間との関係

キクザメは、肝油が利用されたり、食用とされることがあるものの、人間に対して危害を加えた事例は報告されていません。しかし、トロール漁業やスポーツフィッシングにおいてまれに混獲されることがあります。南アフリカでは肝油が医薬品として高い評価を受けますが、インドでは劣った品質とされ、防虫用途で使用されることがあります。

生息数に関するデータは不足していますが、漁獲量の減少に伴い、全体的にキクザメの個体数も減少していると考えられています。20世紀以降、特にヨーロッパでは多くの地域で見られなくなっており、北ヨーロッパ沿岸や地中海ではますます希少な種となっています。乱獲が主な原因と考えられ、キクザメの長寿命と成長の遅さが影響を与えているとされています。

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