コクトー・ツインズ

スコットランド出身のコクトー・ツインズは、1979年から1997年にかけて活動したロックバンドです。彼らはその革新的なサウンドで、後の音楽シーン、特にシューゲイザーやドリームポップといったジャンルに大きな影響を与えました。バンドの中心を担ったのは、他に類を見ないボーカルスタイルのエリザベス・フレイザーと、幻想的なエフェクトを駆使したギターサウンドを生み出すロビン・ガスリー、そして後に加入するベーシストのサイモン・レイモンドです。エリザベス・フレイザーは、その卓越した歌唱力が高く評価され、著名な音楽雑誌の「歴史上最も偉大なシンガー」リストにランクインしたこともあります。

結成から初期の飛躍

バンドは1979年、ロビン・ガスリー（ギター）とウィル・ヘッジー（ベース）によってスコットランドで結成されました。その後、地元のディスコで出会ったエリザベス・フレイザーがボーカリストとして加入し、ラインナップが固まります。彼らは結成初期、ジョイ・ディヴィジョンやスージー・アンド・ザ・バンシーズといったポストパンク／ゴシック系のバンドから影響を受けつつ、独自の音世界を模索しました。バンド名の由来は、シンプル・マインズの初期の未発表曲にあるとされています。

1982年、彼らは名門インディーレーベル4ADからデビューアルバム『ガーランズ』をリリース。この作品と、続くシングル「Lullabies」は直ちに成功を収めました。特に注目を集めたのが、フレイザーのボーカルです。その歌声は独特の発音や造語（と聴こえる表現）を多用し、時に歌詞が判読しがたいほどでしたが、その神秘性と美しさで多くのリスナーを惹きつけました。

サウンドの変化とサイモン・レイモンドの加入

1983年のセカンドシングル発表後、ベーシストのウィル・ヘッジーが脱退します。初期のサウンドはベース、ギター、ボーカルのバランスで成り立っていましたが、ヘッジー脱退後のセカンドアルバム『ヘッド・オーバー・ヒールズ』では、ガスリーのギターとフレイザーのボーカルがサウンドの中心となりました。この変化は、彼らの代名詞とも言える、エフェクトを深くかけたギターと浮遊感のあるボーカルが織りなす幻想的なサウンドの確立へと繋がります。この時期から三拍子の楽曲が増えるのも特徴です。『ヘッド・オーバー・ヒールズ』は、前作から大きく変化しつつも、批評家とリスナー双方に広く受け入れられました。

同年、ガスリーとフレイザーは4ADのプロジェクトであるディス・モータル・コイルに参加し、ティム・バックリィの楽曲をカバーした音源がヒットしました。このプロジェクトでの活動を通じて、彼らはベーシストのサイモン・レイモンドと出会い、レイモンドは間もなくコクトー・ツインズに正式メンバーとして加入します。レイモンドが加わったバンドは再び安定したリズム隊を得て、1984年のサードアルバム『トレジャー - 神々が愛した女たち』など、その後のキャリアを代表する傑作を次々と生み出しました。

レイモンドが他のプロジェクトに参加していた時期もありましたが、バンドは精力的に活動を続け、1988年にはアメリカでの配給をメジャーレーベルのキャピトル・レコードと契約。同年には5枚目のアルバム『ブルー・ベル・ノール』を発表しています。

商業的成功と新たな試み

1990年リリースの6枚目のアルバム『ヘブン・オア・ラスベガス』は、バンドのサウンドが成熟した到達点の一つと見なされ、同時に商業的に最も成功した作品となりました。しかし、この時期、バンドはレーベルとの関係悪化やメンバー間の個人的な問題を抱えており、結果として長年在籍した4ADを離れることになります。新たな契約先として、英国などではマーキュリー・レコード傘下のフォンタナ・レーベルを選び、アメリカでは引き続きキャピトル・レコードから作品をリリースしました。

1993年の7枚目のアルバム『フォー・カレンダー・カフェ』では、これまでの重層的で濃密なサウンドから一転、よりシンプルでクリアなアレンジが試みられました。フレイザーのボーカルも以前より歌詞が聞き取りやすくなり、この音楽性の変化はファンの間で賛否両論を巻き起こしました。

活動の終焉

1995年には実験的なシングルとして、アコースティックな「Twinlights」とエレクトロニックなリミックスを含む「Otherness」を発表。そして1996年には8枚目のアルバム『ミルク&キス』をリリースし、精力的にツアーを行いました。このツアーで披露された「Touch Upon Touch」という楽曲が、結果的にバンドにとって最後の公式楽曲となりました。

1997年、バンドは通算9枚目となるはずだったアルバムのレコーディングを進めていましたが、その途中で突如として解散を発表します。未完成の楽曲も存在したものの、これらが日の目を見ることはありませんでした。

解散後、一度は2005年のコーチェラ・フェスティバルでの再結成が発表されましたが、エリザベス・フレイザーの個人的な理由によりキャンセルされ、コクトー・ツインズがライブを行うことは二度とありませんでした。

コクトー・ツインズの音楽は、その独創性と美しさによって、今なお世界中のリスナーに愛され、多くのアーティストに影響を与え続けています。

主なメンバー
エリザベス・フレイザー (ボーカル)
ロビン・ガスリー (ギター、ベース、プロデュース)
サイモン・レイモンド (ベース、ギター)

代表的なアルバム
『ガーランズ』 (Garlands, 1982)
『トレジャー - 神々が愛した女たち』 (Treasure, 1984)
『ヘブン・オア・ラスベガス』 (Heaven or Las Vegas, 1990)

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