コサック・ママーイ

コサック・ママーイは、ウクライナの伝統美術におけるコサックの理想像として知られています。彼はウクライナの守り神、そしてウクライナ人のシンボルとして、古くから人々に崇められてきました。コサック・ママーイの絵画は、18世紀から20世紀にかけてウクライナの民家でイコンのように扱われ、神聖視されてきた歴史を持ちます。

コサック・ママーイの起源

コサック・ママーイの人物像の由来については、確かなことはわかっていません。有力な説としては、17世紀以降に創り上げられたウクライナ・コサックの総合的なイメージであるというものがあります。また、14世紀にウクライナの一部を支配していたモンゴル帝国の武将ママイという実在の人物がモデルであるとする説も存在します。しかし、14世紀のコサック・ママーイの絵画は現存しておらず、現存する絵画のほとんどが18世紀以降に描かれたものであることから、現在では前者の説が有力視されています。ただし、コサック・ママーイの絵画にはアジア的なモチーフが多く見られるため、後者の説も完全に否定することはできない状況です。

絵画に描かれるコサック・ママーイ

絵画の中のコサック・ママーイは、オークの林で愛馬の隣にあぐらをかき、ウクライナの民族楽器であるバンドゥーラを弾いている姿で描かれることが一般的です。彼は、東洋風の上着であるジュパーンをまとい、ゆったりとしたズボンであるシャロヴァールィと錦の長靴を履いています。頭にはコサック特有の前髪（オセレーデツィ）があり、長い口ひげを蓄え、コサック・パイプをくわえています。周囲には槍が立てられ、ウクライナの伝統的なお酒であるホリールカの瓶とグラスが置かれているのが特徴です。

絵画に込められた意味

コサック・ママーイの絵画に描かれるものには、それぞれ深い意味が込められています。バンドゥーラはウクライナの歌、馬はウクライナの自由、樫の木はウクライナの不屈の精神を象徴しています。また、酒瓶とグラスはコサックの墓に副葬品として納められたり、槍が墓の上に立てられたりすることがあったため、これらは人生の儚さや死への覚悟を表していると解釈されています。

絵画に添えられた言葉

コサック・ママーイの絵画には、ウクライナ人のユーモアや人生観を表現する格言や詩が書き込まれることもありました。中でも特に人気を博したのは、「俺はコサック・ママーイだぞ！ 俺の平安を乱すな！」という言葉でした。

生活に根付いたコサック・ママーイ

コサック・ママーイの絵画は、ウクライナの民家ではお守りのような役割を果たし、戸、壁、窓際、櫃、食器などの生活用品にも描かれていました。現代のウクライナにおいても、コサック・ママーイは人気の英雄として愛され続けており、その石像や銅像は首都キエフをはじめとするウクライナ各地に建てられています。また、2003年にキエフ映画スタジオが制作した映画『ママーイ』は、特に若者の間で人気を集めました。

コサック・ママーイは、単なる伝説上の英雄というだけでなく、ウクライナの文化や歴史、そして人々の精神を象徴する存在として、今もなお深く人々の心に刻まれています。

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