コスタリカの軍事

コスタリカの軍事組織：常備軍廃止後の国の守り

コスタリカは、1949年の憲法改正により常備軍を廃止し、軍隊を持たない国として知られています。しかし、国の安全を維持するために、公安部隊、沿岸警備隊、航空部隊といった組織が存在し、それぞれ重要な役割を担っています。

常備軍廃止の背景と現状

憲法で常備軍は禁止されていますが、非常時には国会議員の3分の2の賛成があれば、大統領に徴兵制の実施と軍隊の編成権限が与えられます。常備軍廃止後も、クーデターを警戒して与党支持者による予備役・民兵組織が残され、訓練が行われていました。1980年代には、周辺国の政情不安から民兵の強化が図られましたが、これらの組織には極右の反共組織も含まれていました。

2010年から2015年にかけてのニカラグアとの紛争の際にも、国境警備のための民兵組織が結成されました。しかし、一部組織が麻薬密輸に関与していたことが発覚し、解体される事態も発生しました。

公安部隊：治安維持の要

公安部隊（Fuerza Pública）は、公安省の管理下にある組織で、警邏・警備警察としての役割を担っています。1994年から1996年にかけて、既存の治安警備隊などを統合して編成されました。「国の自主性を守る」「公安・秩序を守る」「住民の安全を守る」という3つの役割が付与されており、国内の治安維持、麻薬対策、犯罪対策だけでなく、地域の平和維持活動にも投入されています。

特殊部隊として、警察介入部隊（UIP）や特殊支援部隊（UEA）が設置されています。また、大統領府や司法捜査局（OIJ）にも特殊部隊が存在します。これらの特殊部隊は、アメリカ合衆国など域外からの軍事訓練を受けていますが、そのことに対する批判も存在します。また、アメリカ陸軍米州学校には多くの警察官が派遣されていましたが、同校の卒業生による人権侵害などの問題が指摘され、派遣は打ち切られました。

公安部隊は、様々なルートから入手した多種多様な小火器を保有しています。常備軍廃止直後にはアメリカ合衆国から供与された銃器に加え、H&K MP5、M16A1、IMI ガリルなど、様々な国の銃器が使用されています。また、少数の迫撃砲も保有しています。

沿岸警備隊：海上警備の砦

沿岸警備隊（Servicio Nacional de Guardacostas）は、治安警備隊海上部隊を改称して設置されました。2018年現在、人員400名、巡視艇8隻を擁しています。最も有力な巡視艇「イスラ・デル・ココ」は、ブローニングM2重機関銃や60mm迫撃砲を搭載しています。また、アメリカ沿岸警備隊の退役船艇の取得も計画されています。

航空部隊：空からの監視

航空部隊（Servicio de Vigilancia Aérea de Costa Rica）は、2018年現在、人員400名、航空機20機（小型輸送機3機、軽飛行機14機とヘリコプター3機）を擁しています。セスナ機、デ・ハビランド・カナダ DHC-7、パイパー機、Y-12、MD 500E、MD 600Nなどを保有し、2018年にはアメリカからUH-1を4機導入しました。

コスタリカは常備軍を持たない平和国家ですが、公安部隊、沿岸警備隊、航空部隊といった組織が、国の安全と国民の生活を守るために重要な役割を果たしています。

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