コナヌカザメ

コナヌカザメ (Cephaloscyllium sarawakensis)

コナヌカザメは、トラザメ科に属する小型のサメで、主に南シナ海と周辺のインド太平洋海域に生息しています。その性質や外見は研究者や愛好者にとって魅力的な存在です。1998年にマレーシアのサラワク州沖で発見され、初めて科学的に記載された際に新種と認定されました。分布は、台湾西部やフィリピン沿岸を除く中国南岸からインドネシアに至る地域で、通常はやや深い水深に生息しています。コナヌカザメはその独特な形状とカラーリングから多くの研究対象となっています。

分類と命名

最初にコナヌカザメを記載したのは、日本の魚類学者である矢野和成とマレーシアのアフマド・アリです。彼らは、1998年にマレーシア沖で得られた21個体の標本からホロタイプとパラタイプを指定し、「SHARKS and RAYS OF MALAYSIA AND BRUNEI DARUSSALAM」という文献でこの新種を発表しました。このとき指定されたホロタイプは成熟した雌の個体であり、マレーシアの国立科学館に収蔵されています。

また、同じ時期に記載されたCephaloscyllium circulopullumやCephaloscyllium parvumは、後の研究でコナヌカザメのシノニムとされました。このようにコナヌカザメの命名は、分かりやすい由来を持つと同時に、研究者間の混同を避ける意義も持っています。

特徴

コナヌカザメの体形はやや太めで、頭部は大きく短いのが特徴です。吻部は広く平坦で、目は小さいですが切れ込みのない鼻弁を持ちます。口は狭く低い位置にあり、下顎は弓状に湾曲しています。顎の歯は非常に小さく、上顎には54〜68本、下顎には60〜63本あります。体側には通常、濃い斑点や鞍型の模様が見られ、この特徴は成長段階によって変化します。

成熟するまでのサイズは、雄が32センチメートル、雌が35センチメートル以上とされ、最大体長はそれぞれ39.7センチメートル、44.1センチメートルに達することが確認されています。体色は変化しやすく、17センチメートル未満の個体では茶色がかり、成長するにつれて模様は薄くなります。特に、30センチメートルを超える個体では模様がほぼ消失し、背面には広い鞍型斑点だけが残る状態になります。

生態

コナヌカザメの生態については、10センチメートル程度で出生し、雄は32センチメートル以上、雌は35センチメートル以上で成熟すると考えられています。また、寿命は約15年と推定されています。このサメは、胃が海水を飲み込み膨らむことができ、危険を感じた際には腹部を大きく膨らませる能力を持っています。

特に注目すべきは、繁殖方法です。コナヌカザメは、他の多くの卵生種とは異なり、子宮内に卵殻を保持し、一つの卵殻に一つの胎児が育つという特異な形式を採用しています。この生殖様式は「保持型単卵生」と呼ばれ、インド洋中部の同属種Cephaloscyllium silasiと似た特徴を持つものの、コナヌカザメに特有です。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）は、コナヌカザメの保全評価を「絶滅危惧ⅠA類」（CR）に設定しています。南シナ海の漁獲圧は非常に高く、特に台湾や中国、ベトナムなどの国々での個体数が大幅に減少しています。例えば、過去45年間で台湾では90%、ベトナムではおよそ96%の減少が見られています。

最近では、日本のアクアワールド茨城県大洗水族館でコナヌカザメの飼育展示が開始され、透明な卵殻を含む状態での展示が行われています。これは日本国内での初めての試みとされ、広く注目を集めています。

このように、コナヌカザメはその独特の生態や繁殖方法、そして絶滅の危機にさらされている状況から、今後も重要な研究対象であり続けることでしょう。

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