コニャック同盟戦争

コニャック同盟戦争：16世紀初頭のヨーロッパを揺るがした戦い

コニャック同盟戦争は、1526年から1530年にかけて、神聖ローマ皇帝カール5世と、フランス、教皇クレメンス7世、ヴェネツィア共和国、ミラノ公国、フィレンツェ共和国、イングランド王国などが結成したコニャック同盟との間で繰り広げられた戦争です。この戦争は、イタリアを巡る覇権争いが背景にあり、ヨーロッパの政治情勢に大きな影響を与えました。

戦争の背景

1526年1月、マドリード条約の締結によって第三次イタリア戦争が終結しましたが、フランスの敗北は、教皇クレメンス7世に強い危機感を与えました。彼は、神聖ローマ帝国の勢力拡大を警戒し、ヴェネツィア共和国と対抗同盟を模索し始めました。その2ヶ月後、フランス王フランソワ1世が解放され、フランスに戻ると、クレメンス7世の同盟構想に賛同しました。イタリア諸国もこれに続き、コニャック同盟が成立しました。しかし、イングランド王ヘンリー8世は、同盟内での主導権を握れないことに不満を抱き、参加を見送りました。

戦争の経過

開戦と初期の戦い

開戦直後、コニャック同盟軍はローディを占領しましたが、皇帝軍がロンバルディアに侵攻すると、ミラノからスフォルツァ家を追放しました。この混乱に乗じて、コロンナ家がローマを攻撃し、一時的に占拠しましたが、賠償金を受け取ると撤退しました。

ローマ略奪

ロンバルディアでの戦いに続き、カール5世はランツクネヒト軍とスペイン軍をピアチェンツァで合流させ、ローマへ進軍させました。教皇軍は皇帝軍を食い止めることができず、ブルボン公シャルル3世が戦死すると、給与が滞っていた兵士たちがローマを略奪しました。教皇はローマから逃れることを余儀なくされました。ローマ略奪は、教皇の権威を大きく失墜させる出来事となりました。

ナポリ包囲戦

ローマ略奪によって、クレメンス7世の発言力は大きく低下しました。教皇軍の脱落に危機感を抱いたフランス王フランソワ1世は、ヘンリー8世との同盟交渉を再開しました。1527年4月30日、ウェストミンスター条約が締結され、フランスはイングランドを同盟に引き入れることに成功しました。フランス軍は、ロートレック伯とペドロ・ナヴァロをナポリへ派遣し、途中でジェノヴァのドーリアを仲間に加えました。しかし、ドーリアはすぐに裏切り、カール5世の軍に加わったことで、フランス軍のナポリ包囲は解体されました。

ジェノヴァの裏切りと戦局の転換

ドーリアの裏切りは、戦局を大きく転換させました。ナポリ包囲の失敗に加えて、疫病の流行によってロートレックとナヴァロが病死したことも、フランス軍の戦力を大きく削ぎました。ジェノヴァは、その後もフランス軍の拠点として機能しましたが、アンドレア・ドーリアに包囲され、降伏を余儀なくされました。さらに、ランドリアーノの戦いでフランス軍が皇帝軍に大敗したことで、フランソワ1世のイタリア支配の野望は潰えました。

戦争の終結と平和交渉

フランス軍の敗北を受けて、フランソワ1世はカール5世との和平交渉を開始しました。交渉は、1529年7月にカンブレーで始まり、ネーデルラント総督マルグリット大公女とフランス王フランソワ1世の母ルイーズ・ド・サヴォワという二人の女性が中心となって進められました。この条約は「貴婦人の和約」と呼ばれています。条約内容は、3年前のマドリード条約とほぼ同じで、フランソワ1世はフランドル、アルトワ、トゥルネーの宗主権を放棄しました。しかし、マドリード条約で要求されていたブルゴーニュ公国の放棄は取り消されました。

8月5日、カンブレーの和約が締結され、フランスは戦争から脱落しました。カール5世はジェノヴァからボローニャに移り、教皇と会談しました。教皇はローマ略奪に参加した兵士を許し、カール5世の戴冠を認めました。その見返りとして、教皇はラヴェンナとチェルヴィアを獲得しました。

フィレンツェの陥落

フィレンツェ共和国は、最後まで皇帝軍に抵抗を続けましたが、1530年、ガヴィナーナの戦いで、フィレンツェ軍は皇帝軍に敗北し、フィレンツェは降伏しました。フィレンツェの鎮圧により、アレッサンドロ・デ・メディチがフィレンツェ公に任命されました。

戦争の影響

コニャック同盟戦争は、カール5世の勝利によって終わり、ハプスブルク家の勢力がイタリアにおいて確固たるものとなりました。この戦争は、ルネサンス期のイタリアの政治情勢を大きく変え、ヨーロッパの勢力均衡にも大きな影響を与えました。

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