コビトホラシノブ

コビトホラシノブ (Odontosoria minutula)

コビトホラシノブはホングウシダ科に属するシダで、日本国内で見られるホラシノブ属の中でも最も小さい種です。これらの植物は常緑性の多年草で、主に山地の渓流沿いの岩の上でコケと共に生育し、特に湿度の高い環境を好む特徴があります。

発見の歴史

1964年に鹿児島大学の佐藤三千代教授によって発見され、東京大学の倉田悟によってコビトホラシノブという名称が付けられました。この名称は小さな葉がぴったりと群生し、まるで手のひらを広げて踊る小人を思わせることからインスパイアされたものです。最初は奄美大島固有の種と考えられていましたが、その後、南西諸島の他の島でも確認されるようになりました。

特徴

このシダの根茎は茶褐色で、周囲に長さ約1mmの鱗片がついており、太さは直径1mm程度です。根茎は横に匍匐して広がり、間隔をあけて葉柄が伸びていきます。野生状態の葉柄は5〜10mmの長さがあり、その先に2〜3cmの卵形または長楕円形の葉身が形成されます。葉は2回または3回羽状に分かれ、2〜4対の小羽片を有しています。

一方、栽培された個体は葉が3〜14cmも成長し、形状は狭い三角楕円形や細長い長楕円形になります。また、これらの葉には4〜10対の小羽片が見られます。特に完全に稔性の葉では、基部で3回羽状の構造が特徴的です。他のホラシノブ属と異なる点としては、小羽片の斜扇形に深く切れ込んだ形状と、狭い楔形の裂片が挙げられます。これらの特徴は、野生種と栽培種の両方に共通して見られます。胞子は楕円形で、表面は滑らかです。

保護状況

コビトホラシノブはその生息地が限定されているため、気候変動などによる環境の変化によって絶滅の危機に直面しています。このため、国際自然保護連合（IUCN）および環境省のレッドリストの両方において、絶滅危惧IA類(CR)に分類されています。また、鹿児島県のレッドデータブックでも絶滅危惧1類に位置付けられており、特に保護が必要な種とされています。これらの情報は、コビトホラシノブが生物多様性の観点からも重要であることを示しています。

このように、コビトホラシノブはその独特の形態と生態から、特に保護に値する植物といえるでしょう。

もう一度検索